IP電話機とは?仕組み・安い理由・アナログ電話との違いを解説|トラムシステム
電話は仕事において欠かせないツールです。利便性や価格面で優れていることから、今後はIP電話が主流になると見られています。そのため、電話設備の新規導入・入れ替えにあたり、IP電話機についてしっかり理解しておくことが大切です。
本記事では、IP電話の定義や仕組み、安い理由、アナログ電話との違いについて説明します。ぜひ参考にしてください。
目次
IP電話とは
IP電話とは、インターネットプロトコル(Internet Protocol)という通信ルールを利用した電話サービスです。電話回線を使った従来のアナログ電話とは異なり、インターネットを通じて電話できることが特徴です。
アナログ電話は各基地局を経由して音声を伝達していましたが、IP電話は音声をデジタルデータに変換し、相手先で音声に復元することによって通話を可能にします。
また、IP電話は、インターネット接続のプロバイダがサービス提供しており、固定電話と携帯電話のどちらでも使えます。音声通話に限られるアナログ電話に対し、IP電話はビデオ通話など映像をやり取りすることも可能です。「LINE」「Skype」「Instagram」などの通話ができるアプリもIP電話の一種と言えます。
IP電話機とは
IP電話を利用するためのIP電話機とは、アナログ電話のように電話回線につなぐのではなく、インターネット回線に接続する電話機です。
アナログ電話回線でIP電話を使うためには、「VoIPアダプタ」「VoIPゲートウェイ」と呼ばれる専用の装置が必要となります。これらの専用装置はプロバイダ推奨の機器を購入する他、NTTでレンタルすることも可能です。
なお、IP電話機は固定電話機のような据え置き型電話機に限りません。最近ではスマートフォンやノートパソコンなど、モバイルデバイスにインストールしたアプリでIP電話を利用するケースも増えています。
IP電話の種類と仕組み
IP電話は、電話番号が割り当てられるか否かによって、次のように種類分けすることができます。
電話番号が割り当てられるタイプ
・0AB-J型
・050型
電話番号が割り当てられないタイプ
・電話番号不要型
ここでは、上記3種類についてそれぞれ説明します。
0AB-J型
0AB-J型とは、「03」や「06」のような市外局番から始まる10桁の電話番号が割り当てられるタイプのIP電話です。
NTT東日本、NTT西日本が提供する「ひかり電話」が代表的なサービスですが、これは光ファイバーを利用したIP電話サービスです。IP回線の基盤がADSLから光ファイバーに変わってきたことで、光ファイバーを利用したIP電話への移行が進んでいます。
0AB-J型IP電話の特徴は次のとおりです。
・通話が固定電話並みの高品質
・電話番号を変えずに引き継ぐことができる
・「110」などの緊急通報や「0120」で始まるフリーダイヤルへも発信可能(※プロバイダによって条件が異なる)
・市外局番から始まる電話番号のため社会的な信頼度が高く、ビジネスでの利用に適している
050型
050型とは、「050」から始まる11桁の電話番号が割り当てられるタイプのIP電話です。最近は、発信者番号として050から始まる電話番号を見かけることも増えてきました。これは050がIP電話の番号であり、IP電話が普及してきたからです。
050型IP電話の特徴は次のとおりです。
・基本料金、通話料金が安い
・同一プロバイダや提携プロバイダ間のIP電話同士は通話料金が無料(※プロバイダによって条件が異なる)
・市外局番が含まれていないので、スマートフォンでも利用できる
電話番号不要型
電話番号不要型とは「LINE」「Skype」「Facebook」「Instagram」といった通話機能を持つアプリのことで、電話番号が割り当てられていません。これらも、VoIP技術を使ったデータ通信によって通話が可能となるIP電話の一種です。
電話番号不要型IP電話の特徴は次のとおりとなります。
・同一アプリ間の通話料金が無料
・同一アプリ間のみでの通話に限られる
なお、050型IP電話についてはこちらの記事で詳しく説明しています。合わせてご覧ください。
IP電話はなぜ安い?アナログ電話との違い
IP電話の特徴の一つは料金が安いことです。例えば、NTT東日本のアナログ電話とひかり電話の料金を比較すると次のようになります。
ここからは、IP電話が安い理由についてアナログ電話との違いをふまえて解説します。
同一プロバイダのIP電話同士の通話料金が無料
IP電話はVoIPという技術を使って通話を可能にしています。VoIPとは、音声信号をデジタルデータに変換し、インターネット回線(IPネットワーク)を通じて伝達する技術のことです。
IP電話同士の通話はIPネットワークのみで完結するため、アナログ電話と違い電話回線は使用しません。IP電話では、同一プロバイダ間のIP電話同士の通話料金が無料に設定されているため、アナログ電話よりも通話料が安くなります。
国内加入電話への通話料金が一律
アナログ電話では距離によって通話料金が増えていきますが、IP電話では距離に応じた課金は基本的にありません。そのため、国内加入電話は通話料金が一律となり、アナログ電話よりも安く利用できる場合が多いです。
IP電話構築に必要なもの
IP電話のシステムを構築するには、PBX(構内交換機、電話交換機)が必要です。PBXは内線や外線の制御を行う機器で、電話の転送や保留などの機能もPBXによって提供されます。
IP電話システム構築ができるPBXには、IP-PBXとクラウドPBXの2種類あります。それぞれ解説しましょう。
IP-PBX
IP-PBXはインターネット用のLANケーブルや無線で接続できるPBXです。IP-PBXには、専用機器を設置するハードウェアタイプと、汎用のサーバーにソフトウェアをインストールして利用するソフトウェアタイプがあります。
内線ネットワークは、電話機やパソコンなどの各端末にIPアドレスを割り当てる仕組みになっているため、物理的な配線を行う必要はありません。
クラウドPBX
クラウドPBXとは、オフィス内ではなくクラウド上にPBXを設置し、内線、外線、転送などの機能が使えるようにしたシステムです。インターネット環境があればオフィスの外や海外など、どこからでも利用できます。
社員のスマートフォンなどの個人端末でも利用が可能で、内線を割り当てることが可能です。そのため、リモートワークや国内外の多拠点間の通話利用にも使われています。
IP-PBXとクラウドPBXについては、こちらの記事で詳しく説明しています。参考にしてください。
IP電話のメリット
アナログ電話と比較した場合、IP電話の最大のメリットに通話料金の安さを挙げる人は多いです。この他には、アナログ電話よりも導入がスムーズという点もビジネス用途で高く評価されています。
アナログ電話に比べ通話料金が安い
距離に応じた通話料金の課金がないIP電話は、国内加入電話への通話料金が一律です。また、時間ごとの通話料金もアナログ電話より安い設定となっています。
さらに、同一プロバイダ、同一アプリ間は通話料金が無料となるため、全体的にアナログ電話に比べ通話料金を安くおさえることが可能です。
電話回線が不要
インターネット回線があれば利用できるIP電話は、電話回線が不要です。そのため、電話回線敷設工事にかかっていた時間や費用を削減することができます。アナログ電話よりもスムーズに導入できるでしょう。
IP電話のデメリット
通話料金や導入費用が安いIP電話ですが、利用するにあたってデメリットもあります。導入後に不便がないかどうか、注意するようにしてください。
発信できる番号に制限がある
IP電話は「110」や「119」などの緊急通報には発信できない場合が多いです。また、電話番号不要型のIP電話の場合、同一アプリ間での通話に限られるため、相手がアプリを使っていない場合や、公共機関などへの連絡ができないことがあります。
停電時に使えない
IP電話は電話回線ではなくインターネット回線を利用します。停電時にはネットワーク接続機器への電力供給がストップし、通話が不可能になることがあるため、注意が必要です。また、インターネット事業者側の障害により使えなくなる場合もあります。
まとめ
IP電話はアナログ電話に比べ通話料金が安く、低価格・短期間で導入できるのが特徴です。すでにインターネット回線を利用しているなら、アナログ電話からの移行でメリットを得られる人が多いでしょう。一方、緊急通報できないことや、IP電話のタイプによっては同一アプリ間での通話に限られることには注意しましょう。
WRITER
トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木康人
広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。