CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは?向上のポイントやツールを紹介|トラムシステム
企業と顧客の関係性において、「CX(カスタマー・エクスペリエンス)」という考え方があります。顧客に対し良いサービス・体験を提供することを意味し、顧客から選ばれる企業になるために重要な考え方の一つです。SNSにより顧客の声に直接触れる機会が多い現代では、CXに対する取り組み方で企業のイメージが左右されるほどの影響力があります。
本記事では、CXの重要性やメリット、顧客の窓口の機能を果たすコールセンター・コンタクトセンターにおけるCX向上のポイントについて解説します。
目次
CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは
CXとはCustomer Experienceの頭文字を取った略称で、企業のサービスを利用したとき顧客が感じる心理的な価値を意味します。「サービスを利用時のポジティブな体験」を新たな付加価値として顧客に与え、競争力やロイヤリティを高めるための指標です。
CXは「サービスの体験価値向上が顧客の購買により繋がる」という概念をもとに、サービスの認知、利用、購入、サポートに至る全フェーズでの体験を総合的に評価します。
たとえば、コンタクトセンターなら「顧客の問い合わせ内容を解決できたか」だけでなく、電話操作のしやすさ、繋がるまでの待ち時間、オペレーターの接客態度、レスポンスの正確さ、アフターサービスの充実度にいたるまで、全てがCXです。
CS(顧客満足度)との違い
CXと従来利用されてきたCS(顧客満足度)にはどのような違いがあるのでしょうか。
まずCSは結果、CXはプロセスに焦点を当てているのが大きな違いです。
CSでは売上や成約率といった最終結果の達成のみを目指しますが、CXでは対応の正確さ、解決までのスピード、社員の印象など顧客が体験した全ての事象が評価対象となります。CSは個別の最適化、CXは全体の最適化を重視していると言えるでしょう。
個々人に求められる対応にも違いがあります。
CSでは全員が安定して成果を出すため、特定のルールやマニュアルに従った行動が重要です。CXでは、顧客一人一人のニーズに対応するため、ルールにないことでも社員が決断、決済する姿勢が求められます。
DX (デジタルトランスフォーメーション)との違い
DXとの違いも見ておきましょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を取り入れて業務を変革することを意味します。デジタル化が進み、紙やエクセルなどで管理・集計を行っていた業務が、様々なITツールに置き換わりつつあります。社内の業務をIT化するだけではなく、顧客や取引先などの関係先を含めて、デジタル技術によりビジネスモデルを見直していく動きをDXと呼びます。
CXとDXは相関関係にあり、どちらかを取り組むと両方へ影響を与えます。CXにデジタルツールは欠かせません。CXを考える際には、顧客だけではなく自社のビジネス全体に視野を広げることで、より大きな効果が期待できます。
CX向上によるメリット
CXに取り組むことで、企業が得られるメリットは次の通りです。
顧客離れの防止
主にサブスク型サービスを提供している場合、契約の継続が企業のミッションです。サービス自体はもちろんのこと、困ったときのサポートが快適に受けられるか等、顧客視点で考えることが大切です。CXの向上により、顧客離が離れないサービス提供をすることができます。
リピーター客の獲得
顧客は快適にサービスを受けられると、リピーターになってくれる可能性があります。「またここに来よう」「次もこれを購入しよう」と思ってもらうためには、ポジティブな体験を提供し、次も選ばれるサービス・企業にならなければなりません。CXを考えることは、未来の売り上げに貢献できます。
口コミによる宣伝効果
SNSで誰でも発信ができる今、一つの口コミが大きな影響を及ぼすことがあります。人は、特別な体験をしたとき周りに伝えたくなります。「接客が良かった」、「店舗がオシャレだった」、「問い合わせでこんなにいい対応をしてもらえた」など、顧客の声を拡散してもらうことで、企業の宣伝効果が期待できます。
ブランド力の強化
より良いサービスを提供することで、サービスや企業の信頼度が増し、ブランド力の強化に繋がります。「この企業の商品・サービスは安心」と感じることで、顧客はその企業のファンとなり、顧客生涯価値(LTV)が高まります。
コンタクトセンターにおけるCXの重要性
CXはコールセンター・コンタクトセンターでも重要視されており、売上やCSと合わせて達成すべき指標とされています。どのような点が重要か見ていきましょう。
顧客の価値観・ライフスタイルの変化
顧客の価値観の変化に伴い、問い合わせ手段が電話のみでは顧客の要望に応えられなくなってきました。そもそも電話を苦手とする世代もいるため、電話以外のチャネルによる問い合わせを受け付ける必要が出てきました。
また、顧客のライフスタイルの変化も理由として挙げられます。共働き世帯が増える中で、窓口の営業時間に左右されず、困ったときにすぐ解決したいという顧客が増えました。そのため、24時間365日、顧客が疑問を解決できる体制づくりが求められています。
サブスク型サービスの増加
サブスクリプション(月額で利用する)サービスが広く普及しています。気軽に始められ、より良いサービスへの乗り換えもできることから、個人向け・企業向けともに利用が広がっています。そのため、企業は顧客へ快適なサービスを提供し、契約をより長く継続してもらうために、CXの取り組み強化を図る傾向にあります。
他社との差別化要因
CXは、競合他社との差別化要因となります。
顧客の声であるVOCから問題点を発見し、随時サービスに反映させていく従来のコンタクトセンターでは「一定水準の顧客満足度」を獲得できます。しかし、マイナス面を払拭するだけでは「顧客の期待を上回る満足度」の獲得は困難です。
そこで重要になるのが、きめ細やかな対応やオペレーターの親身な接客で、顧客の期待以上の対応を付加価値として提供することです。最高の顧客体験は一朝一夕で模倣することは困難なため、強力な差別化要因としてコンタクトセンターの価値を高めるのです。
貴重な顧客接点
人を介さないデジタルサービスや接客が増えている現代のビジネスにおいて、コンタクトセンターは貴重な顧客接点となっています。
オペレーターとの対話が最初の接点となる顧客も増えており、問い合わせからアフターサービスに至るまであらゆる顧客体験をもたらすことが可能です。顧客と1対1で接し、的確なアドバイスや対応を行ってくれるのはコンタクトセンターならではの強みであり、企業もCXの改善に力を入れています。
コンタクトセンターにおけるCX向上のための3つのポイント
コールセンター・コンタクトセンターはCXの最前線と言えます。様々なデジタルツールが提供されている現代でも、問い合わせチャネルの1位は依然として電話となっています。
ここからは、コールセンター・コンタクトセンターでCXを向上させるためのポイントについて紹介します。1対1ならではの対応を意識し、顧客に提供できる体験を考えていきましょう。
オペレーターの業務支援
CXの獲得には、各オペレーターが自社の商品・サービスを熟知し、自身の業務に責任感を持ってしっかりと取り組むことが欠かせません。しかし、オペレーターの採用難や離職率の高さが問題となっているセンターが多いのも事実です。
充実した研修、マニュアルの整備、スーパーバイザーによる面談やフィードバック、チャットボットの導入を行い、オペレーターの教育体制と業務支援体制を強化しましょう。
AIツールの導入も効果的です。音声のテキスト化による聞き漏らし防止や、対応した回答候補の表示など、オペレーター支援に効果的なツールは日進月歩で発展としています。
働きやすい職場の実現によって離職率が改善すれば、業務に熟知したベテランオペレーターを増やし、よりよいサービスを提供することが可能になります。オペレーターの採用コスト・教育コストの削減も期待できるでしょう。
データの活用
ただ闇雲に行動するのではなく、コンタクトセンターに蓄積されたデータを分析し、どのような対応がCX向上に繋がるか分析してみましょう。
積極的なヒアリング、顧客に寄り添う姿勢など、利益に直結せずともCX向上につながる行動は数多く存在します。発見したCX向上に繋がる施策にスコアを1つ1つ設定し、全体の最適化を目指しましょう。
全ての問い合わせ窓口(チャネル)の強化
電話だけでなく、メールやチャットによる対応もCXに含め、チャネル同士を連携する必要があります。それぞれのチャネルが独立している場合「メールで問い合わせした内容を電話でもう一度全て説明しなければいけない」といった二度手間が発生します。
電話やメールなどの窓口が変わっても、顧客は1つの企業として問い合わせを行います。CRM(顧客管理システム)などを活用し、各チャネルの連携を強化しましょう。
CX向上につながるツール
CX向上にはデジタルツールが欠かせません。CX向上に繋がるツールをご紹介します。
CRM(顧客管理)システム
CRM(顧客管理)システムとは、住所や氏名、購入履歴や応対履歴などの顧客情報を一元管理するシステムです。
顧客からの問い合わせを受けるコールセンター・コンタクトセンターでは、着信時に顧客情報をポップアップしたり、過去の問い合わせ内容を参照したりと、CRMはスムーズな顧客対応に欠かせません。効率的な顧客管理と顧客満足度向上のためにも、CRMは有効なツールといえます。
MA(マーケティングオートメーション)
MA(マーケティングオートメーション)とは、デジタルマーケティングを自動化するツールです。顧客の誕生日にクーポンを送ったり、過去の購入履歴から商品を提案したり、顧客ひとり一人に合わせたマーケティングを行うことができます。顧客に特別感をもってもらうことで、購入につなげることができます。
web接客ツール
ECサイトの普及により、web上の接客も顧客の購入に対する体験をより良くするツールとして注目されています。代表的なweb接客ツールは以下の通りです。
・ポップアップ:クーポンなどをポップアップ表示
・チャット:web上で困りごとを解決
クーポンは購買意欲を高めたい場合に効果的です。チャットによるサポートも、疑問がすぐに解決できるため顧客満足度向上が期待できます。
まとめ
CX向上施策を継続的に実行することで、企業の競争力やロイヤリティは確実に改善されていきます。コンタクトセンターでのVOC収集を積極的に行い、既存の価値観に囚われない自由な発想から、よりよいCXの実現を目指しましょう。

WRITER
トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木 康人
広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。