コンタクトセンターを立ち上げるための手順・ポイントを解説|トラムシステム
コールセンター・コンタクトセンターは、ECでの通販が普及したことや、企業と顧客の関係を重要視する動きから、需要が増加しているといえます。そのため、新たにコールセンター・コンタクトセンターの立ち上げを検討している企業もあるでしょう。
本記事では、新たにコールセンター・コンタクトセンターを立ち上げる手順やコスト、ポイントを解説します。
目次
コールセンター・コンタクトセンターの重要性
コールセンター・コンタクトセンター(以下、コンタクトセンター)は、企業にとって重要な立ち位置にいます。背景として、店舗での直接販売をしないECの普及により、コンタクトセンターが顧客接点の場となっていることが挙げられます。また、顧客のニーズに応えるため、電話やメールはもちろんのこと、チャットやFAQなどの問い合わせチャネルが増加しています。
これらのチャネルによる対応は、顧客満足度に直接影響するため、企業は顧客とのリレーションシップを戦略的に築き、顧客との良好な関係を強化しています。
さらに、コンタクトセンターには様々な顧客からの声が集まるため、マーケティングや商品開発に活かすこともできます。
このように、コンタクトセンターは企業と顧客の接点として大きな役割を果たしています。そのため、コンタクトセンターの立ち上げにあたっては、ただ「顧客の電話を受け付ける」だけではなく顧客のニーズにも焦点を当てて考えていく必要があります。
コールセンター・コンタクトセンターの2つの立ち上げ方
コンタクトセンターを立ち上げる手段として存在するのが、自社運用(内製)と外注(BPO)です。それぞれメリットとデメリットが存在します。導入を検討中の方は、それぞれの特徴を吟味し、自社の環境に適した形式を選択しましょう。
自社運用(内製)
1つ目が、自社内でシステムを構築する内製です。専用の施設を建造するかどうかで、費用は大きく変動します。オペレーターの熟練度を高めやすい、運用することで有益なノウハウを得やすいといったメリットが存在しますが、人件費、システム導入費、土地代(専用施設が必要な場合)が必要です。
近年は、在宅勤務を中心とした在宅コールセンターがコスト削減を実現するとして注目を浴びています。
今回の記事では、自社運用(内製)のコンタクトセンターを主軸に解説していきます。
外注する(BPO)
2つ目が、システムをアウトソーシングする外注(BPO)です。内製とは違い、導入や運用に必要なコストを抑えやすいという特徴があります。ただし、ノウハウが蓄積されにくく、オペレーターの熟練度をコントロールしにくいのがデメリットです。
BPOコールセンターについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
コールセンター・コンタクトセンター立ち上げ費用の内訳
コンタクトセンターを開設する場合、どのような費用が発生するのでしょうか。今回は、自社運用(内製)の際の導入、運用コストについて詳しく解説します。自社で運用する場合は、導入費用だけでなく運営費用や費用対効果までしっかり見極めましょう。
初期費用
初期費用には、主に以下のコストが含まれています。
電話回線工事
コミュニケーションの基本となる電話を利用するための回線を敷設します。クラウドPBXであればコスト削減が可能です。
コンタクトセンターシステム導入
近年のセンターは、対応履歴の確認や顧客情報の照会を容易にするコンタクトセンターシステムを構築するのが主流です。場合によっては、自社の環境に応じたカスタマイズも行われます。
コンタクトセンターシステムにはオンプレ型とクラウド型の2種類があります。
オンプレ型は自社にサーバーや機器を設置するため、初期費用が高額となり、構築に時間を要する傾向があります。ただし、外からの影響は受けにくいため、強固なセキュリティ環境を構築できるメリットがあります。
クラウド型はオンライン上のサーバーに構築をするため、機器の設置の必要がなく、初期費用が抑えられるメリットがあります。導入までの期間もオンプレ型よりも短いため、時間をかけず導入を進められます。セキュリティ体制はベンダーによって異なるため、事前に自社の要件に適合しているか確認しましょう。
オプション機能
コンタクトセンターシステムには、さまざまな要望に応えるためのオプションが用意されています。必要な場合は、費用を支払って取得しなければなりません。
初期費用を抑えたい場合は、まず必要最低限の回線および機能から始め、その後必要に応じて追加していきましょう。
運営費用(ランニングコスト)
運営費用(ランニングコスト)は、主に以下の通りです。
コンタクトセンターシステムの利用料金
コンタクトセンターシステムは、利用し続けている限り料金が発生します。契約プランや利用機能によって月額料金が決定されるため、不必要な機能を契約していないか定期的に見直しすることが重要です。
採用費・人件費
新たにオペレーターを採用する場合は、採用費、人件費が発生します。新たに管理者やスーパーバイザーをや雇う場合、オペレーターよりもさらに費用がかかります。
また、コンタクトセンターシステムを維持するには、システムの保守運用を担う人員を雇用し続けなければなりません。ただし、クラウド型コンタクトシステムはベンダーが保守を担うため、保守運用のための人件費は発生しません。
移転、維持費
オンプレ型のシステムの場合、移転や設定変更の費用が都度発生します。また、機器の不具合やバージョンアップの対応も必要になります。
クラウド型システムは機器設置がないため、移転時はパソコンを移設すれば利用できます。設定変更もweb上で行うことができるため、自社で完結できます。
コールセンター・コンタクトセンターの構築手順
コンタクトセンターは、顧客からの問い合わせや意見を集約し、顧客満足度の向上やサービス改善のために大きな役割を持ちます。一方で、自社にあった最適なコンタクトセンターの立ち上げのためには様々な検討項目があり、段取り良く進めていくことは難しいのが実情です。
コンタクトセンターを開設する場合、一般的には以下の手順で検討を進めていきましょう。
1.ゴールと目的の設定
コンタクトセンターの立ち上げ前に、まずはコンタクトセンター立ち上げのゴールと目的を明確にします。目指すべきゴール、目的によってアプローチ方法が変わってきます。
例を3つ紹介します。
・コンタクトセンターに対する顧客満足度を向上させて解約防止を図る
・業務の効率化を行い生産性を向上させる
・直接顧客へアプローチを行い売上向上を支援していく
そして、明確にしたゴールや目的は明文化し、コンタクトセンターの関係者に展開して全スタッフに共通理解をしてもらうように促します。
どれほど優れたゴールや目的があったとしても理解されていなければ意味がなく、曖昧なまま進めることによって方針が属人的になったり、各スタッフのモチベーションが下がったりしてコンタクトセンターの構築に支障が出てしまいます。センター内の目に入りやすいところに掲示するなど、オペレーター全員が意識できるように工夫しましょう。
2.現状調査
コンタクトセンター開設のゴールや目的を全スタッフに共有ができた後は、関係部署にヒアリングや調査をするなどして、現状を整理していきます。調査していくポイントとしては、一般的には以下の5つの項目について調査を行います。
(1)運用プロセス
現状のコンタクトセンター・電話受付体制などの運用プロセスを洗い出し、利用している機能、運用フローなどを調査します。
(2)マネジメント
オペレーターやスーパーバイザーなどの運用体制、管理体制について調査します。
オペレーター何名に対してスーパーバイザーを1名配置して運用した場合の実績など、検討材料として使えるようなデータを集めるようにします。
(3)組織体制
業務内容とそれを運用している組織、規模について確認します。
(4)教育トレーニング
オペレーターなどに実施されている教育プランや実行状況を確認します。
定期的に行われている研修以外にも外部向けのセミナー参加などがあれば、合わせて確認しておきます。
(5)システム
コンタクトセンターで利用されているシステムを洗い出し、利用者数や利用シーンに応じてどのようなシステムがどういった仕様で運用されているかを細かくしておきます。
ここで集めた調査結果は、コンタクトセンター立ち上げ時に必要な要件を整理するため、以降の詳細設計で使用します。
3.詳細設計
現状調査で得られた結果や発見された課題に対して解決ができるよう、これから立ち上げるコンタクトセンターの詳細設計を進めます。
(1)業務プロセス
新しいコンタクトセンターで求められている機能を整理して、どのような作業をどのようなプロセスを経て進めていくかを整理します。整理した内容に合わせて、マネジメントしていくKPIや定期的に行う報告内容、緊急時の体制などを検討し、それに合わせてコンタクトセンターの体制や組織、緊急連絡網を整備します。
(2)マネジメント
業務プロセスが固まった後に定義した業務プロセスを問題なく運用するための管理項目を検討し、その管理項目を誰がいつどのようなタイミングで、どのような方法で確認していくかを決めていきます。
設定した管理項目のベンチマーク指標を事前に設定し、問題なくコンタクトセンターの運営ができているかどうかを確認できるようにしておきます。
(3)組織体制
業務プロセス、それを管理するマネジメント方法を確定した後は、それを確実に履行するために必要な作業工数や担当者の数を算出し、運用するための組織体制を整理します。組織体制には、必要な人材要件や役割のほか、必要な人数やどのようなチーム体制、リーダーが誰かまで詳しく決めておきます。
(4)人材育成
最後は人材の育成です。組織体制で定義したコンタクトセンターを運営するために必要な人材を育成するための教育、研修プランを定義していきます。
4.システム構築
詳細設計が終われば、次は実際に必要なシステムを構築していきます。
(1)電話関連
電話回線の契約やPBXなどの機器の調達、実際に業務要件を満たすための各種データ設定を行います。
(2)ネットワーク関連
自社のセキュリティポリシーを準拠するネットワーク設計を行います。
(3)ファシリティ関連
コンタクトセンター運営に必要な環境(オフィスレイアウトなど)を確保し、什器、備品などの手配などを行います。顧客管理システム(CRM)を導入する場合には、仕様に基づいた画面設計、データ設定なども行い、必要な権限を付与していきます。
CTI(Computer Telephony Integration)と呼ばれる着信時に顧客情報を表示させるなどのシステムを利用する場合には、他システムとのデータ連携が発生するため、問題なくデータ連携が行われているかどうかを動作検証を行いながら確認します。
5.運用体制構築
システム構築は所謂”モノ”の手配であり、それだけでは業務を行うことができません。実際に業務を行えるように業務運用ルールを構築して、必要な人材確保を行います。
(1)業務運用構築
業務運用構築では実際に業務を進めるために必要な各種マニュアルの作成やオペレーターなどのシフトパターンを作成していきます。例えば、業務マニュアルであれば、オペレーター用の応対マニュアル、管理者へのエスカレーション時のマニュアル、システム操作マニュアルなどが該当します。
管理マニュアルであれば、オペレーターの勤怠管理方法やシフト作成のルール、KPIマネジメント手順と各指標値のベンチマーク方法などになります。
(2)人材採用
システムと業務運用構築が終われば、後は実際に働くスタッフを新たに募集したり、社内で人員を確保したりして、人員を集めます。その際、組織体制で定めた人材要件や役割、必要な人数などを参考にしながら、その条件を満たせるような採用活動を行います。
(3)研修
業務プロセスを実施するにあたり必要となる研修プログラムを設計します。もちろん、プログラムだけではなく実際に研修で使用するテキスト、マニュアル、なども用意しておきます。よくある研修としては、情報セキュリティ研修、応対品質向上研修、業務研修、スキルアップ研修等が挙げられます。
オペレーター教育についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせて参考にしてください。
コールセンター・コンタクトセンター立ち上げ時のポイント
コンタクトセンターを立ち上げる際、以下の観点に注意して検討を進めます。それぞれの観点について詳しく内容を確認していきます。
運用・管理体制
コンタクトセンターの運用・管理体制は、円滑な業務実施のために重要です。
コンタクトセンターは一般的に売上目標と密接な関係があることから、営業部の配下にコンタクトセンターを配置することが多いです。一方、コンタクトセンター運営に発生するコストは経理部や総務部であったり、顧客情報管理から効果的な施策の企画検討はマーケティング部が携わったりと複数部門が関係してくることがほとんどです。
コンタクトセンターの業務方針やコストなど、関連する部門が密接に連携ができるように部署間同士の連携を高めておくことが大切です。
また、テレアポ業務を行う場合には管理者と複数のオペレーターがセットになって対応するため、管理者を適切な場所に配置をして管理ができるような体制も求められます。管理者の近くにオペレーターを配置することで緊張感から仕事がやりにくかったり、逆に離れすぎてしまってはオペレーターのサポートをすぐにできなくなってしまいます。
オペレーターの特性を理解して適度な緊張感と何かあった際のバックアップが取れるようなオフィスレイアウトを組んでいきましょう。
コスト管理
運用するコンタクトセンターの予算から、規模を決めていきます。
初期費用は導入時に目標を達成するために必要な設備、体制(人件費含む)を想定し、業者と交渉しながら価格を下げる取り組みを行っていきますが、コンタクトセンター運営が始まった後のランニングコストは定期的な見直しによりコストを下げる取り組みが求められます。
ランニングコストに大きな影響があるのはオペレーターなどの人件費になります。こういった目に見える経費は業務の見直しによる生産性向上やオペレーターの研修強化などで、オペレーターの質を上げつつコストを下げていく取り組みを行いましょう。
一方、通信費のような見えにくい経費があります。
通信費の中にはオペレーターが顧客に電話をかける際に発生する通信料がありますが、通信プランによっては3分○円といった分単位で課金されるものがあります。顧客対応によっては数秒で終わる対応も多くあり、その場合は秒単位の課金プランに変更するだけでかなりのコスト削減ができるため、オペレーターの対応状況レポートから最適なプランへの見直しを検討します。
オペレーター育成
顧客と直接接点があるオペレーターの質を高めていくことは、コンタクトセンター運営には欠かせません。特にCS(顧客満足度)が低いと余計なトラブルを生んでしまったり、顧客からの評価が下がり売上目標達成を実現するのが困難になるなど、多くのコンタクトセンターでCS向上の取り組みを行っています。
どんなに素晴らしいシステム、マニュアルを用意してもオペレーターのレベルが低ければ高いCSを実現することはできません。事前にオペレーターに求めるレベル(スキルや応対品質など)を定義してベンチマークを設定し、指導者によって教え方や達成目標がブレないように整備しておきます。
また、こういった教育に使えるよう、各オペレーターの通話時間や通話内容などをデータとして蓄えることができるシステム導入の検討も同時に行います。ミステリーコールなどを採用して適度な緊張感を与えたり、会社としてオペレーターへの期待や目指すべき姿などを伝えていき、オペレーターの意識を改革していくことも大事です。
その一方で、オペレーターは直接顧客と相対することから高いストレスを抱えていることがほとんどであり、長期的に働いてもらえるような環境を構築しておくことも合わせて検討します。
例えば、クレーム時のエスカレーションフローを明確に定義して、オペレーターがクレーム対応で精神的な負荷をあまり受けないようにしておくことや、適正な評価により人事制度の明瞭化、キャリアパスの設定などによる目標設定なども考慮しておきましょう。
優秀なスーパーバイザーの確保
直接顧客と接点があるオペレーター以外にも、コンタクトセンターをより良いものにしていくためには優秀なスーパーバイザーを任命し、適切に配置していくことが欠かせません。スーパーバイザーはオペレーターが対応できないような難易度の高い問い合わせやクレーム処理など、高度な対応スキルと高いコミュニケーション能力が求められています。
スーパーバイザーの役割や仕事内容、重要性などを確認したい場合には、以下の記事を参考にしてください。
自社に合ったシステム選定
コンタクトセンター立ち上げの目的・ゴールが実現できるコンタクトセンターシステムの選定は非常に大切です。標準で搭載している機能や、オプションとして提供している機能など、コンタクトセンターシステムによって異なるため、機能面・コスト面のバランスを考えながら選定しましょう。
・顧客満足度を向上 →オペレーター支援ツール、顧客の自己解決ツール など
・業務効率化 → 後処理の効率化、音声のテキスト化・要約 など
・売上向上支援 → オートコール機能 など
目的・ゴールに適した機能があるか、追加で使いたい機能があるときに柔軟に対応できるか、システムベンダーにあらかじめ確認しておきましょう。
顧客のニーズに応じたチャネル設計
現在も電話サポートの需要は大きいですが、若い世代ほど自己解決を望む傾向にあります。LINEやSNSに若い時から触れてきた世代は、電話に抵抗感を覚える人が多いことが理由として挙げられます。そのため、チャットやメール、FAQなどによるサポートのニーズは高まっています。
また、チャットボットやFAQ、音声ガイダンスなどは、コンタクトセンターの営業時間に係わらず、24時間365日の対応を実現できます。顧客のライフスタイルに合わせたチャネル設計で、顧客満足度向上を目指すことができます。
まとめ
自社の目的を達成するためのコンタクトセンターを開設するには、様々な検討を同時に行っていく必要があります。目標設定から現状分析、設計構築といったコンタクトセンター立ち上げの流れをしっかりと理解し、立ち上げ後のことも考慮に入れた上で進めるようにしましょう。
おすすすめのクラウド型コンタクトセンターシステム「TramOneCloud CXi」
「TramOneCloud CXi」は、電話やチャットなどの基本機能を有しながら、あらゆるチャネルと連携できるオムニチャネル対応のシステムです。在宅コールセンターにも適したセキュリティを備えており、パソコンがあればどこでも業務を行うことができます。
オペレーター支援に特化したAIも搭載しており、音声のテキスト化や要約による業務効率化も実現できます。

WRITER
トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木 康人
広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。