在宅コールセンターの仕組みとシステム丨導入時のポイントを解説|トラムシステム
全国での有効求人倍率が1.3倍程度と、人材不足が年々深刻化しているコールセンター・コンタクトセンター。解決策として導入されているのが、オペレーターが自宅から勤務する在宅コールセンターです。
しかし、セキュリティやコールセンターシステムの構築など、導入に際していくつかの注意点が存在します。本記事では在宅コールセンターの仕組みや導入時のポイント、メリット・デメリットについて解説します。
目次
在宅コールセンターとは
在宅コールセンターとは、オペレーターが在宅で勤務し、自宅でコールセンター業務を行うことを指します。
これまでのコールセンターは、会社内のオフィスにコールセンタールームを設置して業務を行うのが一般的でした。しかし、技術の進歩や人手不足から来る企業・労働者の意識の変化によって、在宅という新たな選択肢が生まれました。
オペレーターの主力を担うのが女性という点も、在宅コールセンターの設置を後押ししました。従来の企業オフィス内での勤務は、結婚や出産を経験すると難しくなるからです。外資系ホテルや大手通信社など、大手企業でも在宅勤務制度を導入しています。
在宅勤務でコールセンター業務を行う仕組み
在宅でコールセンターを行うには、以下の3つの仕組みを整える必要があります。
1.お客様からの電話をどこでも受け取れる、ロケーションフリーのコールセンター・コンタクトセンターシステム
コールセンターの在宅化するには、オペレーターが自宅のパソコンからインターネットを通じて業務を行うためのコールセンターシステムが欠かせません。コールセンターシステムの要件や構築方法については、記事の後半で解説します。
2.顧客の個人情報を守る、セキュリティ対策が施されたパソコン環境
コールセンターでは、顧客の名前、住所、性別、購入履歴など多くの機密情報を扱います。在宅コールセンターでは個人が保有するパソコンで業務を行うことになるため、万が一にも機密情報が漏洩しないよう、しっかりと対策を講じる必要があります。
3.オペレーター同士やオペレーターと管理者間の連絡手段(ビデオチャット、テキストチャットなど)
離れた場所でもオペレーター同士が連携を取り合いながら業務を行えるよう、連絡手段を確保することも大切です。例えば、対応中の案件や休憩などをテキストチャットで共有したり、SV(スーパーバイザー)とのビデオチャットで応対についてのFBを受けたりといったことができます。
在宅コールセンターで期待できる効果
在宅コールセンターは、企業・労働者双方に様々なメリットをもたらします。企業側のメリット、働く側のメリットをそれぞれ確認していきます。
企業側のメリット
在宅コールセンターを運用する企業へのメリットは、以下の通りです。
・コストを削減できる
従来のコールセンターには物件、内装工事、機器など様々な設備投資が必要で、初期費用は膨大な物でした。しかし、在宅コールセンターの場合、最低限の機器揃えれば開設できるので、コストを大幅に抑える事が出来ます。
・人員の調整が容易にできる
コールセンターには繁忙期・閑散期があるので、時期に応じた人員調整が行われています。在宅コールセンターは、人員増強の際は日本全国から募集を行うことで比較的短期間で人員を補充でき、また逆に人員削減の際には機器の撤去だけで規模を縮小できるという特徴があり、時期に応じた人材調整が容易に行えます。
・離職率の減少に繋がる
場所や時間を選ばず、オペレーターの希望に沿った勤務ができるので、ワークライフバランスと社員の士気が向上します。結婚や妊娠で在宅中心の生活になる場合であっても退職や長期間の休職をする可能性は減少するため、経験を積んだベテランオペレーターの維持にも繋がります。
働く側のメリット
在宅コールセンターで働く側のメリットは、以下の通りです。
・家事や育児との両立可能
コールセンターの業務に限らず多くの職種において、女性は妊娠や結婚を機に退職や休職をしなければいけず、キャリアの中断による復帰の難しさなどの問題がありました。在宅コールセンターでは、自宅で家事や育児のスキマ時間に勤務することが可能となり、プライベートと仕事を両立したライフスタイルが実現可能です。
・給与が高い
「1時間○○円」のような時給ではなく、「契約成立ごとに○○円」のような成果型報酬になっているのが、在宅コールセンターの特徴です。成果を上げることができれば、時給1,000円以上を狙うこともできます。専門知識やスキルも不要なので、手っ取り早く稼ぎたい方におすすめです。
・場所や時間を選ばない
従来のコールセンターとは異なり、就業時間や勤務場所の制限がほとんどありません。スキマ時間に働く、扶養控除の範囲内に収まるように調整するなど、希望に沿った働き方ができます。
在宅コールセンター導入時の注意点
利便性の高い在宅コールセンターですが、デメリットもあります。期待通りの効果を得るためにはこれらのデメリットを理解し、予め対策をしておくことが重要となります。
応対品質が不安定になりやすい
それぞれ離れた場所で勤務する在宅コールセンターは、管理者によるオペレーターの状態確認が従来よりやりにくい部分があります。その結果、トラブルや要望に対して適切なアドバイズができず、応対品質が下がってしまう危険性があります。応対品質の低下を防ぐためには、以下のような対策が効果的です。
1.FAQシステムを導入し、オペレーターが疑問点を検索できるようにする
2.顧客情報を確認しやすいようにし、柔軟な対応を行えるようにする
3.管理者がウィスパー(オペレーターへの助言機能)を積極的に利用する
セキュリティ対策をしっかり行う
防音壁に囲まれたコールセンターとは違い、在宅での勤務はセキュリティに気を使わねばなりません。通話内容を誰かに聞かれていた、USBやソフトウェアを盗難されたなど情報流出の危険性があります。セキュリティを強固にしたい場合は、以下のような対策があります。
1.オペレーターが危険を感じた時、すぐ通報できる体制を整える
2.問題のあった端末に対するアクセス制御やシャットダウン機能の実装
3.ユーザー認証やリモートロックでデータを守る
コミュニケーション不足になりやすい
従来のコールセンターでは、疑問点などは周りの人間に質問できます。しかし、在宅の場合はそれは難しいです。周りの人間に頼ることができないのはオペレーターの心理的負担となり、業務への障害になる危険性もあります。コミュニケーション不足の解消には以下のような対策が効果的です。
1.ボイスチャット、テキストチャットなどの連絡手段を確保する
2.管理者から迅速な支援を受けられる体制を作る
3.内線電話を在宅でも受けられるようにする
在宅コールセンターシステムとは
在宅コールセンターを開設する際は、コールセンターシステムも構築するのがおすすめです。概要やメリットを解説しますので、実際の運営の際の参考にしてください。
コールセンターシステムとは、顧客情報照会や連絡の取次など、コールセンターの運営をサポートするシステムです。各自離れたところで作業することが多い在宅コールセンターでは、コールセンターシステムの補助が必須となります。
コールセンターシステムは、以下のような機能で構成されています。
クラウドPBX
クラウドPBXとは、従来オフィス内に設置する必要があったPBX(構内交換機)をクラウド上に置き、インターネットを通じてアクセスすることで通信環境を実現するシステムです。
クラウドPBXを活用することで、オペレーターは自宅のパソコンからインターネットを通じてオフィスの電話回線にアクセスし、電話応対を行うことが可能になります。
CTIシステム
CTIとはComputer Telephony Integrationの略で、電話とコンピューターを統合する技術です。全ての操作がディスプレイ上で可能となり、顧客情報の閲覧や管理者へのとりつぎも容易です。既存のCRM(顧客管理システム)や営業支援システムとの連携もできます。
CRMシステム
CRMとはCustomer Relationship Managementの略で、お客様の情報を収集・分析することで、適切なサービスや商品を提案できるようになる顧客管理システムです。CRMによって、顧客情報のスピーディーな閲覧とお客様のタイプに応じた電話対応が可能となります。
コールセンターシステムについてはこちらでも詳しく解説しています。
在宅コールセンターシステムの構築のポイント
コールセンターシステムを在宅コールセンターに導入することで、オペレーターと管理者の連携・新人オペレーターの戦力化・顧客満足度向上が可能です。
最後に、在宅コールセンターシステムを構築する際、どのような視点が必要なのかを紹介します。重要なポイントを抑え、在宅コールセンター構築を成功させましょう。
在宅化する業務の選択
まず必要なのが、「在宅で可能な業務な何か?」という視点です。在宅コールセンターは、どちらかというとインバウンドよりもアウトバウンド業務のほうが向いています。好きなタイミングでお客様へのお電話が可能で、連携せず個別で業務を行えるからです。
ただし、小規模の場合はインバウンド業務も実現できる可能性があります。最適な業務は何か、を常に問いかけながらシステムを設計しましょう。
セキュリティレベル
コールセンターを開設する際、情報を守るためのセキュリティは必須です。口座番号など秘匿性の高い情報を扱う場合、は在宅コールセンターに向いていないという特徴があります。扱う情報の種類とセキュリティを考えながら、システムを構築しましょう。
在宅コールセンターのセキュリティ対策については、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひご確認ください。
導入・運用コスト
コストを削減できるのが在宅コールセンターですが、予算を抑えすぎると運営に支障をきたします。CTIやCRMなど、システムの根幹をなす要素には一定以上の予算をかけるのが無難です。
また、多くのシステムでは席(ブース)数ごとで料金を計算する仕組みになっています。初期費用があまりかからないかわりに月額料金が割高になっているサービスもあるため、長期的な視点からコスト計算を行うようにしましょう。
まとめ
在宅コールセンターは、従来のコールセンターが抱えていた人手不足や早期離職などの問題を解決する画期的な仕組みです。セキュリティや品質など、導入の際に解決するべき課題はありますが、それらも事前対策により解決することができます。
全てを在宅勤務化するのに不安がある場合は、コールセンター勤務と在宅勤務の併用もおすすめです。メリット・デメリットをしっかり把握し、働く人間と会社双方が利益を得られる環境を整備しましょう。

WRITER
トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木 康人
広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。