音声マイニングとは?無料ツールやコンタクトセンターでの活用例を紹介|トラムシステム
コンタクトセンター・コールセンタの業務改善は喫緊の課題となっていますが、その中で注目されているのが「音声マイニング」です。音声データのテキスト化とテキストマイニングを合わせた技術で、オペレーターやSVの業務を効率化できるツールとして開発が相次いでいます。近年ではAI (人工知能)技術の進歩で、精度も格段に上がっています。
そこで、本記事では音声マイニングの活用例やメリット、導入のポイント・注意点について解説し、最後に無料で使えるツールの紹介をいたします。
目次
音声マイニングとは
音声マイニングとは、音声データをテキスト化する「音声認識」と、テキスト化された文章から意味のある情報を抽出する「テキストマイニング」を組み合わせた言葉です。
特に、コンタクトセンターを中心に活用が広がっています。日々蓄積される大量の音声データを分析するために音声マイニングを導入することで、業務効率化や応対品質向上、お客様の声(VoC)収集などさまざまな効果・メリットが期待出来ます。
音声マイニングの手順として、音声データのテキスト化を行い、テキストマイニングにより解析・分析を行います。音声データのテキスト化、テキストマイニングについて詳しく知りたい方は、こちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
コンタクトセンターにおける音声マイニングの活用例
では、コンタクトセンターで音声マイニングはどのように活用されているのでしょうか。主な活用例を3つご紹介します。
VoC(顧客の声)分析
応対途中でお客様からいただくお客様の声(VoC)はコンタクトセンターだけでなく、商品開発や営業・マーケティング部門にも活用できる宝の山です。
担当者が気づいていない問題点やお客様の関心事・トレンドを分析できるので、新商品・サービス開発に活用したり、販売戦略の策定に役立ちます。しかし、人手で書き起こし・収集するのは時間と手間がかかるのが課題でした。
音声マイニングを導入することでVoCを手間なく短時間で収集可能です。商品・サービス、営業・マーケティング戦略の改善はもちろん、顧客満足度の向上や他者との差別化などさまざまな良い効果をもたらします。
通話内容の記録・要約
従来はオペレーターが通話の後に応対内容を文字で書き起こす必要がありました。そのため、そもそも入力に手間がかかる上に、人により表記ブレがあったり、誤字があったり、データ収集や分析を行うには正確性に欠けることが課題となっていました。
音声マイニングにより、通話内容がリアルタイムでテキスト化され、通話終了後に要約を行う作業が自動化できます。特にコンタクトセンターでは、後処理の中の応対内容の入力は必須業務です。この業務が自動化されることは、オペレーターの業務負担軽減に大きく貢献します。
オペレーター評価
オペレーター評価には、顧客とオペレーターの会話を録音したデータを1件ずつ聞く必要があり、多くの時間を割かなければならない業務となっていました。
音声マイニングと活用することで、テキスト化したデータからNGワードを抽出してオペレーターへのフィードバックや対応の改善に活用できます。また、AIにより応対品質の評価ができるツールもあります。良い応対・悪い応対を学習し、偏りのない評価を実現できます。
コンタクトセンターにおける音声マイニングの導入メリット
音声マイニングは日々大量の音声データを扱うコンタクトセンターと相性の良い技術です。 ここからは、コンタクトセンターで音声マイニングを活用することで得られる効果やメリットを4つ解説します。
オペレーター業務効率化
リアルタイムで応対内容をテキスト化することで、オペレーターの顧客応対業務を効率化できます。
顧客情報など、通話で得た情報を手動で文字に起こす必要がなくなり、通話内容のテキスト化・要約も自動的に行えます。今までは通話中や通話終了後に行っていた作業の削減につながるでしょう。また、顧客管理システムと連携することで、通話終了後に自動的に通話内容を登録できたり、FAQシステムと連携することで、通話内容に応じた回答を自動表示させたりと、さらなる業務効率・生産性向上を進めることもできます。
応対品質の向上
応対品質の向上を目的に通話録音をSVや品質担当者などがチェック(モニタリング)するセンターも多いのではないでしょうか。
しかし人手での確認には限界があり、全件確認ではなく数件のサンプル確認となってしまうのが現実です。サンプリングから漏れてしまえば、改善すべき応対は見逃されてしまい、応対品質は一向に改善しません。
対して音声マイニングを導入した場合、すべての通話を確認することができます。現状を正確に把握することで、より的確な改善の見直しができるでしょう。
また、リアルタイムでテキスト化することで、会話内容の確認や聞き間違を防ぐことができます。顧客とスムーズにやり取りできることで、通話時間の短縮や顧客満足度向上にも期待ができます。
オペレーター教育
音声マイニングにより、ベテランオペレーターの応対をテキスト化し、他のオペレーターの共有することができます。特に新人オペレーターに対しては、カリキュラムにベテランオペレーターの応対内容を組み込むことで、センター全体で目指す応対品質を明確化できます。
さらに、コールセンター業務のノウハウを蓄積していくことで入社したばかりの新人オペレーターの研修にも活用できます。現場ですぐに役立つノウハウ・ポイントを押さえた研修ができるので、研修期間の圧縮・早期戦力化に効果が期待できるでしょう。
ニーズの把握・需要予測
問い合わせ内容の傾向や、時期による需要の予測をすることで、オペレーターの適正人数をある程度予測することができます。結果に応じてシフトを組むことで、最低限の人数でスムーズに応対ができます。そのため、センター全体の人件費などコスト削減にも繋がります。
音声マイニングツールとは
音声マイニングツールとは、音声マイニングを手軽に導入するために開発されたシステムツールです。音声データの分析に必要な機能を網羅し、豊富な分析手法や使い勝手・操作性を追及しています。
従来は、自社で必要なサーバ機器を選定~構築・開発をするオンプレミス型のシステムツールが主流でした。近年では初期費用を抑えつつ短期間で導入できるクラウド型の音声マイニングツールが登場し、多くの企業で音声マイニングの活用が進んでいます。
音声マイニングツールの選定ポイント
音声マイニングツールの導入を検討する場合、どのような点に留意して選定すればいいのでしょうか。 ここからは音声マイニングツールの選定ポイントを4つ紹介します。自社センターの状況や導入目的などを踏まえて、検討時の参考にしてください。
音声データの分析精度
音声マイニングツールは万能ではなく、誤認識や認識漏れなどが発生します。特にコンタクトセンターではお客様とオペレーターの会話が分析対象となるため、声の大小・高低、方言、周りのノイズなどの要素をシステム的に正しく判断するのは難しいといわれています。
分析精度は製品によって大きく異なりますので、製品資料や営業担当者へのヒアリング、導入実績・口コミなどを参考によく確認しましょう。
優れた辞書登録機能
音声認識は音声認識辞書を元に実施する仕組みです。商品名やサービス名や業界特有の専門的な用語、トレンドワード、略語などは一般的な辞書には登録されていません。どのような辞書機能が搭載されているか、辞書の追加・削除は簡単にできるかなども重要なチェックポイントです。
必要な機能が搭載されているか
音声マイニングツールと一口にいっても、搭載されている機能は各製品大きく異なります。音声認識、テキストマイニングの基本機能に加え、以下のような機能が搭載されているツールもあります。
・自動応答機能やリアルタイムでのリスク通話確認などの業務効率化機能
・豊富な分析機能
・見やすさ、分かりやすさにこだわったレポート機能
・顧客管理システム(CRM)など社内システムとの接続機能
・セキュリティ機能
まずは自社の導入目的や解決したい課題を明らかにした上で、音声マイニングツールに求める機能を洗い出し、検討対象の製品を比較しましょう。使い勝手や操作性は実際に触ってみないと分かりにくいところなので、無料トライアルを積極的に活用するのがおすすめです。
運用のしやすさ(メンテナンス、費用)
音声マイニングツールは導入して終わりではなく、導入後も継続してメンテナンスが欠かせません。
例えば、分析精度を上げていくためには、定期的なチューニング作業が必要となります。社内に専門知識やスキルを保有する担当者がいなければ、購入後も設定・分析のサポートが受けられる製品を選択したり、チューニング画面が直観的で分かりやすい製品を選んだりと、中長期的な「運用のしやすさ」を確認します。
また、コスト面にも注目しましょう。オンプレミス型、クラウド型でコスト構成は異なりますが、初期導入時の費用、導入後にかかるサービス利用料、保守開発・カスタマイズ費用、運用費用などを総合的に考慮して導入検討を進めます。
音声マイニング活用時の注意点
多くのメリットがある音声マイニングですが、活用するにはいくつか注意点もあります。せっかくツールを導入したのに上手く活用できなかった、といった失敗がないように、導入・運用の指針を明確にしましょう。
明確な目標設定
音声マイニングをなぜ業務で利用するのか、指針となる目標は詳細に設定しましょう。例えば、以下のような活用例が考えられます。
・コンタクトセンターの応対記録の中から顧客が頻繁に問い合わせを行う項目を探り、FAQを更新して問い合わせ件数を削減する
・オンライン商談で優秀な社員の会話内容を分析し、販売を成功させるためのノウハウをマニュアル化して売り上げをアップする
漠然とした目的で情報を抽出するのではなく、確固たる指針や数値目標を設定することが重要です。
データの可視化
企業内での共有をスムーズに行うため、データの可視化も求められます。単なる文字情報だけでは把握に時間がかかるため、グラフ、図、散布図などを積極的に利用し、データの見える化を行いましょう。
データに捕らわれすぎない
データから導き出された結果は過去の事例を踏まえた上でのデータであり、信憑性は高いものの、現実はケースバイケースです。過去のデータと似たような事例に出くわしてもそれが最適解とは限りません。データを基にするのは大切ですが、データに捕らわれすぎないようにしましょう。
無料で使えるおすすめ音声マイニング・テキストマイニングツール
「音声マイニングに興味はあるが、いきなり高額なツールを導入することはできない」 いう方に向け、今回は無料で使えるおすすめツールを紹介します。
ただし、無料で音声認識が可能な製品は少なく、テキストマイニングに限定されていることが多い点に注意しましょう。
ユーザーローカル
株式会社ユーザーローカルが提供している音声マイニングツールで、ブラウザ上で誰でも利用できるのが特徴です。
100,000文字までの音声認識とテキストマイニングが無料となっており、単語の出現パターンを図で表した共起ネットワークや、出現傾向が似ている単語をグルーピングする階層的クラスタリングを閲覧できます。
参考:ユーザーローカル
Excel
エクセルの機能を利用すれば、初歩的なテキストマイニングが可能です。
1.文章を単語ごとに分解する形態要素解析を事前に行う
2.COUNTIF関数やINDEX関数などを用いて単語の出現頻度を明らかにする
3.単語の出現頻度を文字の大きさや色に反映した「ワードクラウド」を作成する
ただし音声認識は不可能なため、あくまでテキストマイニングの効果を実感したい方向けの手法です。また、専用ツールよりも精度や実施できる範囲が限られます。
KHCoder
ダウンロード型の無料テキストマイニングツールです。
システムが自動でテキストから情報を抽出する段階と、利用者のルール指定でより詳細な結果を導き出す段階に分かれており、頻出語や共起ネットワークを確認できます。ソースコードが公開されているため、スキルのある方ならカスタマイズも可能です。
さらに、フル機能版やMac向けの自動設定ソフトウェアが有償で販売されています。
参考:KHCoder
MeCab
文章を単語1つ1つごとに分解する形態要素解析を行うためのエンジンで、誰でも無料で利用できます。高精度な解析機能や、Web上の表現を取得して定期的に更新する辞書機能を備えているのが特徴です。ただし、プログラミング言語を駆使した環境構築など、利用の際には一定の専門知識が必要となります。
参考:MeCab
JUMAN
MeCab と同じく、研究者向けに開発された無料の形態素解析ツールです。
利用者が文法や単語間の接続関係の定義を変更することが可能となっています。オノマトペや長音記号の自動認識、自動辞書の改良などが行われており、パソコンで日本語の解析を行いたい方におすすめのツールです。
参考:JUMAN
まとめ
近年、音声マイニングはAI(人工知能)技術の進化によって大幅に分析精度が向上しています。既に多くのコンタクトセンターで導入が進んでおり、業務効率化や応対品質向上などコンタクトセンターのさまざまな問題解決に役立ちます。まだ導入していないコンタクトセンターは、検討を進めてはいかがでしょうか。

WRITER
トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木康人
広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。