GCPを利用する前に知っておきたいメリットとデメリット|トラムシステム
Googleが運営元のクラウドコンピューティングプラットフォームであるGCPは、現在様々な企業で幅広い用途で導入されています。開発者であればぜひ知っておきたいGCPについて、仕組みやメリット・デメリットなどを詳しく解説します。
クラウドサービスとは
パソコンにソフトやアプリケーションをダウンロードしなくても、インターネット経由で利用できるサービスをクラウドサービスと呼びます。クラウドとは雲を意味しており、インターネットが生み出したネットワークの、複雑で先が見通せないさまを表した言葉です。ネットワークそのものを、クラウドと呼ぶこともあります。
もう少し分かりやすく、クラウドサービスの代表格「Gmail」で説明しましょう。Gmailは、約4億2500万人が利用している世界最大のメールサービスです。Googleのアカウントがあればダウンロード作業なしですぐ始められる、パスワードとメールアドレスを覚えていればどの端末でも利用できる、1年以上前のメールも検索機能で確認可能というメリットがあります。
実は、Gmailの利点は全てクラウドサービス由来のものとなっています。アカウントだけですぐ始められるのは、クラウドに全てのシステムが存在しているからです。データの保管先がクラウドになっているので、アクセスできれば端末は問いません。端末の容量関係なくデータを保存できるので(Gmailの無料プランで最大15GB利用可能)、1年以上前のメールも確認できます。
クラウドサービスのメリット・デメリット
クラウドサービスのメリットは、以下の通りです。
・ネットワークにつながった端末さえあれば、設備や施設がなくてもすぐ利用できる
・サービスの利用料を支払うだけなので、導入コストや維持コストが低い
・全てのシステムはクラウドに存在するので、端末を問わない
・オプションの追加やサービスの変更も容易
・災害やサイバー攻撃などのトラブルが発生しても、データが流出しにくい
コストを抑えられる点やデータを安全に管理できる点が評価され、企業のデータベースや基幹システムもクラウド化が進んでいます。
その一方、以下の5点がデメリットとして挙げられています。
・セキュリティ対策が充実しているが、オンラインなので一抹の不安は残る
・オフライン環境では利用できない
・あくまでサービスを借りるだけなので、自分のものにすることは出来ない
・トラブルが発生した場合、復旧を待つしかない
・サービスをカスタマイズしにくい
銀行のように厳重に保護すべき情報がある企業、システムを自由にカスタマイズしたい企業、オンライン環境のない企業にはおすすめできないサービスです。
GCPとは
GCPとはGoogle Cloud Platformのことを指します。Googleが運営元のクラウドコンピューティングプラットフォームで、多くの企業で利用されています。
GCPの市場のシェア
GCPと比較されるのが類似サービスであるAmazonのAmazon Web Services(AWS)や、MicrosoftのMicrosoft Azureです。他にはIBMやAlibabaなども同様のサービスを運営していますが、世界的に見るとAmazon、Microsoft、Googleが世界のシェアの多くを獲得しています。
canalysによると2018年8月時点でのシェア率は、AWSが1位で31%、Microsoft Azureが18%、GCPが8%となっています。世界中の企業から様々なサービスが提供されている中で、上位3サービスで約6割のシェアを獲得しているということになります。
GCPのサービスカテゴリー
現在、GCPには多種多様なサービスがあります。ユーザーは、クラウドコンピューティングサービス、ビッグデータを活用した分析や機械学習サービス、ID管理サービスなどの中からそれぞれの目的に応じて選択することが出来ます。
他にも、Gsuiteで包括されているGmailやGoogleドライブ、カレンダー、ドキュメントやスプレッドシートといったビジネスパーソンが情報共有やコミュニケーションでよく利用しているサービスもあります。
GCPでゲームやMap、ブラウザ、OSの開発なども行えるため、開発者がやりたいことは一通り揃えられているのではないでしょうか。開発者以外のビジネスパーソンも利用しやすいツールがそろっていますが、企業に導入する場合はどのような使い方をするのか検討が必要です。
料金体系
料金は従量課金制となり、利用した分だけ料金がかかります。無料トライアル期間もあり、気軽に試すこともできます。ただGsuiteなど一部のサービスではベーシックプランで月額600円かかるなど、定額制が採用されていることもあります。
GCPのメリット
1.信頼性が高い
まず、GCPはGoogleのサービスなので信頼性がとても高いです。AmazonにせよMicrosoftにせよ、クラウドプラットフォームサービスの質以前のところで元々大きな企業であり知名度が高く、信頼性が高いからこそ多くのユーザーが利用しているというところがあります。
マイナーなサービスでもとても質のいいものはあるのですが、信頼性という意味で考えると既に知っている企業のサービスを利用するというのは、GCPに限らずありがちな選択です。
2.初期投資がかからない
オンプレミスで設備を導入する場合、初期費用がそれなりにかかってしまいます。開発環境を導入しようとしたら何百万円もかかってしまうことも珍しくありません。
対してGCPの場合、サブスクリプション形式での課金が主流なので、初期費用がかかりません。使った分しか料金が発生しないので、費用が乏しい企業でも導入は可能です。
3.システム構築までの期間が短い
オンプレミスでシステムを構築しようとすれば、全て一から作り込まなければいけないので時間がかかります。しかしGCPならば全てのサービスはパッケージ化されているので、利用したいサービスを選択するだけですぐに利用することができます。
4.アクセス数の増加にも容易に対応できる
サーバーなどの処理能力を向上させるスケールイン、稼働数を増やすことで全体の処理能力を向上させるスケールアウトを柔軟に行うことができるので、アクセス数が増えたときの対応が可能です。
ホームページなどを運営していて、人気が出てくるとアクセス数が増え、サーバーがダウンしてしまうことがあります。何もないときに問題なく稼働できても、トラブル発生時に何もできなければシステムとしてそれ程良いものとはいえません。
もちろん技術力は必要ですが、GCPのカスタマイズの柔軟性が可能にすることであり、GCPが扱いやすいことが分かる一例でもあります。
GCPのデメリット
1.セキュリティ面で不安が残る
オンプレミスとクラウドを比較したときにどうしても不安視されるのがセキュリティ面です。オンプレミスならば社内のシステムの中でデータが管理されますが、クラウドサーバー内では自社以外のデータと共有されているため、どうしても不安を感じてしまいます。
共有とはいっても他ユーザーが自分のデータを見ることはできず、過剰に心配する必要はありません。しかし、気持ちの部分で本当に大丈夫なのだろうか、という不安が残ることもあります。
2.長期的にコストがかかる
オンプレミスで設備を自社で購入した上で導入するのであれば、クラウドサービスのように長期的に支払が継続するということはありません。
GCPの場合は使用した分だけ支払が発生する仕組みのサービスが多く、サービスの使用に対して料金が発生し続けます。対してオンプレミスでは自社で設備を持っていれば保守や運用のための費用はかかりますが、それ以外は余りお金がかからないからです。
初期費用がかからないことはGCPのメリットの一つですが、長期的な運用を考えるとオンプレミスも選択肢のひとつとして考慮してみましょう。
まとめ
GCPは設備が必要のないクラウドサービスであることから初期コストがかからず、導入しやすいことやGoogleのサービスであることによる信頼性などを理由に多くの企業に選ばれています。
Gsuiteのような開発者向けではないサービスもあるので同時に使いやすい点も魅力です。無料で始められるので、興味のある方はGCPを一度利用してみましょう。
WRITER
トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木 康人
広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。