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なぜ日本に働き方改革は必要なのか?課題と期待される効果をわかりやすく解説|トラムシステム

安倍晋三首相の提唱を皮切りに、一億総活躍社会の実現に向けた政府の取り組みが本格化してきました。その取り組みの一環として、サービス残業や長時間労働の税制をはじめとする働き方改革も推進されています。そこで今回は、日本の労働者の仕事や生活に大きな影響をもたらしうる働き方改革について解説していきます。

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働き方改革前の働き方

働き方改革の詳細に踏み込んでいく前に、「なぜいま働き方改革が求められているか?」に触れておきましょう。その名のとおり、働き方改革は現在の日本の労働者の働き方を変えていこうという取り組みです。では、変えるべき現在の働き方にはどんな問題があるのでしょうか。

国際的に見ても深刻な日本の長時間労働

2013年に、日本は国連(国際連合)から以下の是正勧告を受けました。

  • ・労働者の多くが長時間労働に従事している
  • ・過労死や精神的ハラスメントによる自殺が発生している

高度成長期には「Japan as No.1」と世界から称された日本ですが、その過酷な労働環境は現在国際的にも懸念されるものとなっています。働き盛りの30~40代を中心に、朝から深夜にまで及ぶ長時間労働の割合が非常に大きい状態です。長時間労働は従業員本人の疲弊・消耗はもちろん、家族との時間の消失や生活の幸福度の低減など、様々な問題にも繋がっていると考えられています。

また、国家の存続に直接的な影響を与える出生率にも大きく作用する可能性があります。長時間労働が日常化により結婚・出産・育児といった選択が採りにくいためです。

過労死、精神的ハラスメントによる疲弊や自殺

世界的な辞典であるオックスフォード英語辞典に「Karoshi(過労死)」が掲載されたのが2002年のことです。20年近く前から、すでに日本企業における労働者の疲弊と過労死は世界的に認知されていたということになります。

過労死は、過度な長時間労働や残業・上司からの理不尽な命令・飲み会の強要や各種ハラスメントからくる心身の大きなストレスで誘発される脳梗塞やくも膜下出血、心不全などの突然死を指します。また、過労に起因するうつ病から自殺となるケースも過労死に含むとされています。

厚生労働省の発表では、2016年度に過労死と認定された事象は191件、過去5年間では実に368人が過労自殺をしたとのことです。この数字はあくまで認定されたものであり、これに類するものや、やや軽度ながら心身の調子を崩してしまったというケースまで含めれば、膨大な数になることは容易に想像できます。世界的に知れ渡ってしまった「カロウシ」の起こる過酷な労働環境は、今すぐにでも是正していかなければならないでしょう。

正規・非正規雇用の格差

近年各所で指摘される正規雇用者と非正規雇用者の格差も大きな問題です。日本では非正規社員の所得は正社員の6割程度となっています。ヨーロッパなどでは8割と言われており、世界と比べてもその格差は大きいと言えます。待遇面で課題のある非正規社員ですが、現実にはこの道を選ばさるを得ない人が少なくないのが現状です。

例えば育児・介護などの負担を持つ人、とくに女性や高齢者は、長時間労働やサービス残業、急な異動や転勤などが前提とされる正社員として働くことは難しく、待遇面で納得がいかなくても仕方なく非正規雇用を選ぶことになっている実態があるのです。

36協定の上限基準とその問題点(特別条項の存在)

労働基準法で定められている36協定は、残業や休日労働をする際の手続きを示したルールのことです。正式には「時間外労働協定」といい、法定労働時間を超える時間外労働や休日労働を、特定の手続きをとった場合にのみ認める、という趣旨となっています。この協定が、労働基準法の第36条に記載されていることから「36(サブロク)協定)」と呼ばれています。

36協定では、1日8時間・週40時間が上限とされる通常の労働時間に、さらに1ヶ月45時間、年間360時間の延長が可能となっています。逆に言えば労働者の残業は、この範囲内に収めなければならないということになります。

にもかかわらず、実態としては月間45時間を超過する長時間の残業が横行しています。これは36協定の特別条項が原因です。特別条項とは「労使間の合意があればどれだけ残業しても良い」というもので、この特別条項のために月間100時間超の残業がある、いわゆるブラック企業があとを絶たないのです。

働き方改革の狙いとは

こうした問題を根本から改善するために推進されているのが働き方改革です。この改革の本当の狙いがどこにあるのか、という議論は2016年に政府が改革構想を発表して以来、常に各所で繰り返されてきました。ここでは、代表的ないくつかの狙いをピックアップしていきます。

現状の労働問題の是正は不可欠

上述した長時間労働や過労死の改善は待ったなしの状況です。

日本は今、経済・社会面で非常に多くの課題を抱えています。前例のない少子高齢化、そこから派生する労働人口の急減、低くとどまったままの労働生産性、伸び悩む国内消費……国家として取り組まなければならない急務が山積している状態となっています。

これら諸問題の原因の一つが、長時間労働をはじめとする労働環境にあると考えられており、その対策としての働き方改革に期待が寄せられているというわけです。

働き方改革の目玉「同一労働同一賃金」とは

「同一労働同一賃金」とは、働き方改革を推進する際に効力を発揮する関連法案でも取り上げられている、働き方改革の目玉とも言える構想です。

この構想では、契約社員・パート社員などの非正規者に関して、正社員と比べた際の不合理な待遇差を設けることを禁じています。不合理な待遇差としては、例えば通勤手当や家族手当を正社員にのみ支給し、非正規社員には支給しない・もしくは上限を設定している、といったものです。こうした不平等がある一方で、担当する業務内容や範囲については正社員とほとんど差がない場合もあり、このようなケースも不合理な待遇差とみなされます。

同一労働同一賃金については、現状では違反企業への罰則・ペナルティは定められていません。とはいえ、このルールに違反する場合、非正規社員から待遇格差に対する損害賠償請求が起こる可能性があります。

現在すでに、退職した非正規社員が企業に賠償を求め、企業側が敗訴する事例がいくつも発生しています。企業としては早急に対策すべき課題と言えるでしょう。

深刻な経済問題デフレの解消も狙う?

働き方改革の重要な狙いとして、デフレからの脱却が挙げられることがあります。物価の持続的な下落を表すデフレ(デフレーション)に苦しんでいるのは、現在先進国の中では日本だけとも指摘されています。

デフレは物の価格が安くなるため、消費者にとっては歓迎すべきことと捉えられがちです。ただ、消費者は労働者の側面も持っているため、安い価格で販売される商品・サービスの売上が「上がらない給与」という形で待遇に反映されることで消費が冷え込んでしまう実態があります。そのため長期的には、安くても物が売れず、さらに給与が上がらない……というスパイラルに陥ってしまうわけです。

デフレの解消と非正規者の待遇改善の関係とは

このデフレからの脱却を目指して、物価の2%上昇を目標に、日銀・黒田総裁が2013年から大規模な金融緩和策をスタートしました。しかし5年が経過した今でも、この上昇目標は達成されていません。「達成する見込みも立たない」とさえ言われている状況です。デフレの根本的な発生原因には諸説あるものの、現在では賃金の低下がもっとも有力とされています。給与が下がったために消費が冷え、それでも買ってもらうために物の値段が下がったということです。

こうした背景から、国全体に節約志向が広がり、企業も対策としての安売り戦略をやめられずにいる、という状況になっています。原因が賃金にあるとすれば、その賃金を改善することで消費拡大、物価上昇も見込むことができるでしょう。そこで、正社員との所得格差に苦しむ非正規層の待遇改善が不可欠であり、実現のための取り組みとして、働き方改革が期待されていると目されるのは当然の流れと言えます。

働き方改革で期待される効果

それでは、働き方改革によってこうした問題が解決されることで期待される効果とは、どのようなものなのでしょうか。

企業から見た効果

長時間労働の削減や待遇改善など、負担が増えるように思われている企業側ですが、もちろんメリットも期待されています。

・生産性の向上
日本企業においては、低い生産性が課題となっています。時間を含む投下コストのわりに、生み出される成果が低いというわけです。この課題は、長時間労働を削減することである程度緩和されると見込まれています。労働時間が制限されることで無駄な業務がカットされ、短時間で成果を出すための取り組みが強化されることが期待できるためです。

・イノベーションの促進
アメリカをはじめとするビジネス先進国に比べて、日本では革新的なビジネスやテクノロジーが生まれにくい傾向があります。その原因の一つに、やはり長時間労働があると考えられます。長時間のハードワークによって疲弊した状態では、前例のない発想や慣習を打ち破るアイデアは出てこないためでしょう。働き方改革によって従業員に心身的ゆとりが生まれることで、イノベーションが起こりやすい素地を作ることは十分に可能ではないでしょうか。

・利益率の改善
人件費は企業の利益を圧迫する大きなコストの一つです。残業削減などにより人件費が大幅カットできれば、そのぶん利益率の改善につながるでしょう。

労働者から見た効果

労働者個人にとっても働き方改革の恩恵は非常に大きなものとされています。マクロな視点で言えば結婚の増加・出生率の改善なども考えられるものの、ここではより身近なものとしてイメージしやすいよう、個人にフォーカスした視点で見ていきましょう。

・労働ストレスの軽減
厳しい就労環境によるストレスは、過労死、うつ病、体調不良など労働者個人に大きな影響を与えます。改革による環境改善によって、長時間労働や残業、あるいは通勤ラッシュからの解放などが実現され、様々な問題の原因とされるストレスの緩和が期待できます。

・私生活の充実
働き方改革では、労働者が個人の事情に即したより快適な環境で働けることの実現も構想されています。例えばフレックス勤務や在宅勤務。育児・介護など家庭の状況に適した柔軟な働き方が促進されていくでしょう。これにより、仕事とプライベートの両立が進み、より充実した生活が実現できる可能性があります。

・多様なキャリア選択
長時間労働・残業削減によって会社に拘束される時間が減れば、空いた時間に資格の勉強をしたり、知識や特技を生かしたダブルワークなども可能となります。個人が自発的に行う副業であれば、会社から強いられた長時間労働とはストレスも充実度も違ってくるでしょう。結果的に、より自由で多彩なキャリアを追求することができるかもしれません。

まとめ

世界的にも過酷さが指摘される日本の労働環境。現状が厳しいものである分、企業・従業員の双方から改革に多くの期待が寄せられています。一方で、「企業がこの改革を積極的に取り入れるかどうか」についてはまだ懐疑的な要素も残っているのが実態です。例えば、以下のような点が挙げられます。

  • ・「同一労働同一賃金」によってコストが増加するのでは?
  • ・生産性向上が達成できないと競争力が低下する可能性がある?
  • ・先行して労働時間削減に踏み切ることで、ライバル企業に対し不利になってしまうのでは?

こうした懸念から、結局各社とも取り組みに消極的になってしまう危険が指摘されています。しかしながら、国際的に見ても日本企業の生産性向上と労働環境改善は不可欠な課題であり、中小企業・大企業を問わずすべての企業が遅かれ早かれ対応せざるを得ないでしょう。

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WRITER

トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木 康人

広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。


UNIVOICEが東京MXの「ええじゃないか」という番組に取り上げられました。

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