ペーパーレスFAXが必須な理由とは?デメリットや注意点も詳しく解説|トラムシステム
請求書の発送や商品の受発注に必要なFAXは、デジタル技術の発展によってペーパーレス化が進んでいます。2022年1月には、帳簿書類の保存に関わる負担を軽減する電子帳簿保存法が改正され、デジタルデータがより保存しやすくなりました。
この記事では、ペーパーレスFAXとは?やメリット・デメリット、電子帳簿保存法の改正による影響について詳しく解説します。
目次
FAXをペーパーレスにすべき理由とは
インターネットの発展とメールやチャットなどの柔軟な連絡手段の普及により、以前よりもFAXの利用頻度は減少しました。日本政府も2021年4月から段階的に「脱FAX」を進めていく方針を打ち出しています。
しかし、その流れに追従して安易にFAXを廃止するのは賢明ではありません。2021年7月には、FAX廃止を打ち出した当時の河野行政改革担当大臣が、400件以上の抗議を受ける出来事も発生しています。
真に目指すべきはFAXのペーパーレス化です。なぜ廃止でなくペーパーレスなのか詳しく見ていきましょう。
FAXそのものの廃止はできないから
FAXそのものを完全に廃止するのは、以下の理由により困難と言えます。
1.顧客や取引先が利用している
顧客や取引先とFAXによる取引が成立している場合、こちらの都合でそれを変更させるのは容易ではありません。
2.業務の見直しが必要
FAXを完全に廃止した場合、代替となるシステムの導入や社員教育など、業務見直しにコストと時間をかける必要があります。
3.FAX特有のメリットがある
紙面でのやり取りは多くの情報を伝達可能で、開封率も高くなります。
4.IT機器が不要
常にIT機器が手元に存在しない業界(飲食業界や建設業界など)では、手軽に利用できるFAXが重宝します。
このように、FAXが求められる場面はいまだ数多く存在します。FAX機能そのものは残しつつペーパーレス化を実現することで、顧客や取引先に合わせた柔軟な対応が可能です。
デジタル社会に取り残されないため
企業が今後の競争に勝ち抜くためには、デジタル化を積極的に進める必要があります。業務のペーパーレス化やコミュニケーションのオンライン化を実現し、コスト削減や業務効率化を達成するDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しなければなりません。
デジタル化に向けて比較的実行しやすいFAXのペーパーレス化は、DXの第一歩となり、DX化を推進する際に役立つ貴重な知見や経験を獲得可能です。
多様な働き方に対応するため
テレワークや在宅勤務制度の導入が珍しいものではなくなった現代で、オフィスにFAX機を置いているだけの状況は業務に支障をきたします。FAX機を利用するための無駄な出社や出勤が発生するからです。
自宅でも送受信できるペーパーレスFAXを導入し、時間や場所を選ばず働けるような環境を整備する必要があります。
ペーパーレスFAXとは
インターネットFAXとも呼ばれるペーパーレスFAXは、文字通り紙を使わずデジタルデータでやり取りを行うFAXです。 受信したFAX文書はPDFデータとして出力するため、共有フォルダへの保存、他のパソコンへの転送、メールへの添付、コメントや書き込みが可能です。
メールとの違いは、従来のFAX機とも互換性を持つ点です。
FAX機から送信されたデータを受信してPDF化する、インターネットFAXから送信されたデータをFAX機で印刷するの両方が可能で、従来のFAX機を利用する顧客や取引先を混乱させません。
ペーパーレスFAXは、ペーパーレスFAX事業者が提供するサーバーを通じて利用するのが一般的です。ペーパーレスFAXサービスは安価な月額料金で利用できるだけでなく、これまでFAX機や用紙に支払っていたコストが不要となり、大幅なコスト削減に繋がります。
メリット
ペーパーレスFAXには、以下のようなメリットがあります。
1.パソコン・スマホから送信できる
2.FAX機、複合機などの本体が要らない
3.送受信したデータの管理がしやすい
4.初期コスト、運用コストが安い
5.セキュリティリスクが小さい
在宅勤務やテレワーク勤務者の多い企業、外部委託やフリーランスと関わりがある企業、社員が複数の拠点で働いている企業では特に有用なツールです。
デメリット
逆に、以下の点に注意が必要です。
1.インターネット回線が必要になる
2.受信料金がかかる場合がある
3.手書き資料の送信には手間がかかる
4.思ったほどコストカットにならない場合も
5.FAXよりも受信に気づきにくい
インターネット設備のない企業、手書き資料を頻繁に使う企業、送信よりも受信が多い企業では注意が必要です。
メリット、デメリットともに、以下のリンク内で詳しく解説しています。
FAXペーパーレス化の注意点
今後の企業に欠かせないFAXペーパーレス化にも、1点注意点があります。法律の改正です。
ペーパーレス化が進行するに従い、デジタル文書に関する法律が改正され、特定の要件を満たさない書類は違法になるなどの制約が発生しています。状況によっては青色申告を取り消される可能性もあるため、注意が必要です。
ここからはペーパーレス化に大きくかかわってくる「電子帳簿保存法」および「e文書法」について解説します。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿のデータ化および保存を認めた法律です。1998年に制定された当時はさまざまな制約がありましたが、現在では適用できる要件が緩和されて、2015年のさらなる要件緩和で利用者が一気に増加しました。
現在対象となっている国税関係書類は、以下の4種類です。
1.帳簿:総勘定元帳、仕訳帳、売上台帳など
2.決算書類:貸借対照表、損益計算書、棚卸表など
3.取引関係書類:自社や他社が発行した領収書、請求書、納品書など
4.電子取引書類:インターネットやメールを通じて受け取った領収書、請求書、納品書など
この法律に関しては「年々データ化可能な書類および適用できる要件が増加しており、4種類が対象」と覚えておきましょう。また、2022年1月より法律が改正され、従来3か月前までに必要だった税務署長への申請が不要となるなど、利便性が向上しています。
真実性と可視性
電子帳簿保存法では「真実性」と「可視性」が重要視されます。
1.真実性
「保存されたデータが改ざんされていない本物であるか」という観点です。訂正や削除といった事実内容の確認を行うため、タイムスタンプの付与などが求められます。
2.可視性
「保存されたデータを誰もが視認、確認できるか」という観点です。検索機能の確保や機器の操作マニュアルの備え付けが求められます。
2022年1月の法律改正によりこちらもやや緩和されているものの「電子帳簿保存法では真実性と可視性の確保が欠かせない」点に留意しましょう。
e文書法とは
e文書法とは電子文書法とも呼ばれており、法人税法、会社法、証券取引法などで法律で保存が義務付けられた文書(帳簿、請求書、領収書)のデジタル化を認める法律です。
法令要件を満たせば紙の書類は不要となり、電子化によって検索性も高められます。電子帳簿保存法が国税に関する帳簿に限定されているのに対し、e文書法はあらゆる法律で定められた文書が対象です。
e文書法の要件は、以下の4つです。
1.データを明瞭な状態で見るための見読性
2.保存中データの消滅や毀損を防ぐ完全性
3.許可された人間のみ閲覧できる機密性
4.データをすぐ引き出すための検索性
これらの要件を満たしていれば、税務署の承認は不要となっています。ただし、定期的なチェックやトラブル発生時の再発防止策などの社内規定を整備しなければなりません。
こちらは「税務署の承認は不要なものの4つの要件を満たす社内規定整備が必要」と覚えておきましょう。
まとめ
FAXのペーパーレス化は各企業で必須のDX化を達成する第一歩となり、業務効率化やコスト削減を実現します。ただし、デジタルデータの取扱いに関する法律が改正されているため、違反にならないよう注意が必要です。FAXデータを適切な形式で保存し、業務に活用できるようにしましょう。

WRITER
トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木康人
広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。