KPIツリーでコールセンターの目標達成するには丨作り方・注意点・メリットを解説|トラムシステム
コールセンター・コンタクトセンターの業務改善や顧客満足度向上を達成するなら、KPIツリーの活用がおすすめです。目標達成に必要な施策の一覧化することで、経験や勘といった不確かな要素に依存しないマネジメントが可能となります。
この記事では、KPIツリーの概要やメリット、具体的な作成方法について解説します。
目次
コールセンターのKPIツリーとは
KPIツリーとは、コールセンターの業績目標を示すKGI(経営目標達成指標)を中間目標となる複数のKPI(重要業績評価指標)で分解し、ツリー状に示したものです。
大目標であるKGIを達成するプロセスを体系的に示すことで、進捗状況の確認や行動の修正が行いやすくなります。さらに、やるべきことが一覧で見える化されるため、チームメンバー全員で目標共有ができるフレームワークです。
KPI・KGIとは
KGIとは、ビジネスの最終目標を分かりやすく定量化した数値。対して、KPIはKGI達成に至る各プロセスの達成度を測るものです。
例えば、小売店で「売上高」をKGIに設定した場合、KPIには「売上単価」と「客数」が該当します。
「売上単価」は「購入品数」と「商品あたりの平均金額」、「客数」は「新規顧客の獲得」と「既存顧客の購入頻度アップ」といったように、KPIは分解の層を深めていくことも可能です。打つべき施策が明確化するまでKPIの層を深めることで、KPIツリーの精度も向上していきます。
コールセンターのKPIとしてよく用いられているのは、以下の3種類です。
1.ACW(1コールに要する後処理時間)、AHT(平均処理時間)のような効率性を測る指標
2.ASA(平均応答速度)、応答率のような応答品質を測る指標
3.CES(顧客努力指標)、NPS®(顧客ロイヤル)のような顧客満足度を測る指標
KPIツリーを作成するメリット
KPIツリーを作成することで、的確な中間目標をKPIとして設定できるようになり、以下のメリットを獲得できます。
KGIと各KPIの相関関係がわかる
視覚的にKGIとKPIの相関関係が読み取れるようになり、整理や分析が可能となります。
KGIと関連性が薄いKPIに関する施策を取りやめ、より関連性が深い項目を新たに設定することで、限りあるリソースをKGI達成に集中させることが可能です。
改善すべき課題が可視化される
KGIの達成を妨げる戦略的な問題や、効果的な施策を実行できていないKPIの抜け漏れなど、コールセンターの生産性向上に関する課題が可視化されます。
KGIのボトルネックを発見し、効果的な施策を実行可能です。
より重要な業務がわかる
KPIを具体的な行動や施策に落とし込むことで、日々の業務の中で重要性の高いものが可視化されます。重要性の低い業務に振り回されることがなくなり、KGIの達成に集中することが可能です。
オペレーターのやる気向上に繋がる
現場で働くオペレーターは自身の業務とKGIの関係性を理解し、仕事に対するモチベーションが向上します。業務の全体像を把握して重要性の高い業務を判別し、個々の生産性を高めることも可能です。
KPIツリーの作り方
KPIツリーはいくつかのステップを経て作成します。複雑な手順ではないので、まずは実際に作成してみましょう。
ステップ1.KGIの設定
まずはKPIツリーの要となるKGIを設定します。
コールセンターの場合は「成約数」や「顧客満足度」といったものが一般的です。曖昧なものや数値目標のないKGIは避け、経営レベルで重要かつ数値で評価できるものを設定しましょう。
ステップ2.KPIの設定
KGIをツリーの頂点に置いたら、KGIを達成するために必要な要素であるKPIをツリー下部に配置していきましょう。その後、KPIの目標を満たすために必要な要素をさらに分解して層を深めます。
客数(KPI)=購入品数×商品当たりの平均金額(KPIを達成するために必要な要素)
「これ以上分解できない」となるまで分解を行うとより効果的です。
ステップ3.KPIがKGIと連動しているか確認
最後に、設定したKPIがKGIと連動しているか確認します。確認する際の基準は「KPIで設定した数値目標をかけあわせるとKGIの数値となるか」です。
客数×売り上げ単価(KPI)=売り上げ高(KGI)
該当しない場合は再度KPIを設定し直す必要があります。
作成時のポイント
また、作成時は以下のポイントも意識する必要があります。
1.エクセルでKGIやKPIを数値化し、パワーポイントで構造化する
2.KPIは数値として計測可能で期間を設定できる指標を選ぶ
3.KPIツリーで使う単位(人や%など)は統一する
KPIとKGIの整合性が取れたツリーを作成しましょう。
KPIで目標設定をする際の注意点
設定したKPIは、KGIが達成されるまで活用し続けることが重要です。しかし、評価基準が曖昧だった、そもそも目標が非現実的だったなど理由で、作ったまま放置してしまうケースも少なくありません。
KPIで目標設定する際には「SMART」と呼ばれるフレームワークを意識して行いましょう。
Specific:目標は明確か
目標は誰でも明確に分かるように設定することが基本です。
「売り上げアップ」「顧客満足度向上」といった曖昧な表現は避け、「今期一人当たり成約数○○達成」「顧客満足度アンケートの数値を○○%に」まで細かく設定しましょう。
明確ではない目標は現場に混乱を引き起こし、オペレーターのモチベーションも低下してしまいます。KPIツリーで分解したKPIを参考とし、現場の人間が自分の事として捉えられる目標にするのがポイントです。
Measurable:測定可能か
進捗状況を確認するため、KPIは測定可能でなければなりません。
例えば「オペレーターのモチベーションを向上させる」といった測定不可能な目標は進捗確認や目標修正が難しいだけでなく、達成のための施策も考案しにくくなります。
このような場合は「モチベーションに関するアンケートで評価7を30%以上にする」といったように、途中経過や結果を確認できる形式に変換しましょう。測定が完全に不可能な場合はそもそもKPIに適さないため、別のものに変更する必要があります。
Achievable:達成可能か
達成可能な目標こそが、生産性とモチベーションを高めます。
飛躍的な成長はどの企業も目指す目標ですが「今期中の成約数を前年対比2倍までアップさせる」といった非現実的なものはかえって逆効果となります。達成可能なKPIを設定するポイントは以下の2つです。
・現実的な範囲の努力で達成できる
・目標達成のために頑張った個人の評価向上につながる
例えば「今期中の成約数を前年対比10%までアップさせる」なら、現実的な目標としてオペレーターも取り組みやすくなるでしょう。成功すれば仕事に対する自信がつき、さらなるモチベーションアップが期待できます。
Relevant:関連性があるか
KGIとの相関が強いKPIでなければ、目標達成は難しくなります。リソースの配分が適切ではないからです。
例えば「売上高向上」がKGIにもかかわらず、KPIに「オペレーターのモチベーションをアップさせる」など関連性の薄い項目が設定されるようなツリー構造は好ましくありません。KPI設定の際は、KGIとしっかり関連付けられているか確認しましょう。
Time-bound:期限付きであるか
KPIは可能な限り短い期間・期限で区切りましょう。定期的に進行状況をチェックし、目標を修正しやすくするためです。
「年間売り上げを○○円までアップさせる」では、オペレーター1人1人が毎日どのように業務に励めばいいか見えにくくなり、日々の生産性を向上できません。「1日当たりの売り上げを○○円までアップさせる」など可能な限り細かく区切り、現場の人間に目標をイメージさせやすくしましょう。
KPIはオペレーターに伝わる形で設定する
KPIを細かく設定するのは、企業の目標を全員で共有し、従業員のやるべきことを明確化する「翻訳作業」と言えます。
コールセンターのKGI達成にはメンバー一丸となった対応が求められますが、SVが「成約数をあげろ」「顧客満足度を向上させろ」と漠然とした目標を提示してもうまくいきません。オペレーター一人一人が自分の業務とリンクさせられる具体的な数値目標をKPIにすれば、自ら重要な行動にフォーカスして業務に励めます。
KPIを達成すれば全体のモチベーションアップに繋がり、未達だった場合も改善策の考案が容易です。SV(スーパーバイザー)側もチームや個人の能力が可視化され、正当な評価の基準とすることができます。
まとめ
KPIツリーを設定することにより、コールセンターが日々の業務で達成すべき目標が可視化され、生産性や売り上げ向上に繋がります。ただし、KPIツリーは設定するだけでは効果を発揮しません。CRMなどのシステムを活用しながらKPIの状況をタイムリーに把握し、結果や課題を共有して品質向上を目指しましょう。

WRITER
トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木康人
広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。