2024年問題とは丨ISDN回線終了の影響・各業界の対応を解説(電話・EDI)|トラムシステム
ISDN回線のINSネットデジタル通信モード(ISDN)が2024年に廃止になることが発表されました。聞いたことはあっても、その背景や対策については分からないという担当者も多いのではないでしょうか。
この記事では、ISDN廃止の「2024年問題」の原因・背景から仕組み、対策方法を解説します。
目次
2024年問題とは
2024年問題とは、NTT東西が計画する固定電話網IP化によって「INSネットデジタル通信モード」のサービスが終了予定であることから、現在している企業の決済・受発注業務への影響が予想されている問題です。
移行は2024年1月(予定)から順次開始し、2025年1月に完全移行する予定です。
2024年問題の原因・背景
現在も企業や通信システムで利用されているISDNの廃止が決定した原因・背景として、大きく3点あげられます。
1.ISDN回線設備の老朽化
これまで家庭や企業に多く普及していたISDNですが、中継交換機・信号交換機などの設備老朽化が原因で、インフラの維持の限界を迎えました。それを踏まえ、NTTはサービス提供が難しいと判断しました。
2.ISDNより優れた通信速度である光回線、ADSL回線の普及
光回線の最大速度100Mbps(1000,000kbps)に対し、 ISDN回線は最大速度64kbpsと桁違いに遅く、速度で大きく劣っていることで利用者減少の一因となりました。
3.料金が割高
フレッツ光ライトの月額3,250円に対して、ISDNは月額料金が6,330円と倍近い料金です。割高な金額に加え、速度の遅さもあり利用者にとって負担の多いサービスとなってしまったことも原因です。
ISDN回線とは
ISDN回線とは「Integrated Services Digital Network」の略で、電話線を使用したデジタル回線のインターネット通信技術を指します。
1988年にNTTによりサービスが開始されたISDN回線。
それまでのインターネット接続方法はアナログ回線でしたが、ISDN回線でデジタル化することで、より高速なインターネット通信が可能になりました。
ISDN回線終了による影響
ここまでISDN終了の概要を解説しましたが、最も深刻な影響を受けるのは食品事業だと言われています。食品を扱うスーパーや小売業では、発注作業などにISDN専用の端末を使用している場合が多いためです。
具体的に影響が懸念されるシステムを紹介するので、自社で利用されていないか確認しておきましょう。
EDI(電子データ交換)
EDI(電子データ交換)とは、BtoB取引における発注書、納品書、請求書などを専用回線やインターネットを利用して受信・送信するシステムを指します。
大きな店舗・チェーン店ではEDIによるデータ通信を利用していることが多く、サービス終了に伴いデータが反映されない、連携が取れないといった問題が生じます。
また、「INSネット デジタル通信モード」の終了に伴う代替策の通信が、「INSネットデジタル通信モード」利用時と比較して約4倍もの遅延が発生することが公表されました。迅速性が求められるEDIですが、2024年問題により出荷や納品の遅れが発生してしまう可能性もあるため、利用者にとって深刻な問題と言えます。
POSレジ
POSとはPoints of Salesの略で、日本語では「販売時点情報管理」と訳します。店舗で商品をスキャンし販売すると、販売がされた時点で企業の本部へデータが送信することで、商品の在庫数や売れ筋などをリアルタイムで把握できるようになります。
企業によっては、POSレジにISDN回線を使っている場合があり、サービスが廃止されると集計ができないといった問題が生じます。
FAX
FAXの場合、最も普及しているG3規格FAXが「通話モード」のため、今回廃止対象のISDN回線「デジタル通信モード」に該当しません。そのため、影響はなくこれまで通り使用することができます。
しかし、G4規格FAXの場合は廃止対象になるため、利用している規格を確認しておきましょう。
ISDN回線の利用を確認する方法
NTT提供のISDNは「INSネット」と言うサービス名称で展開されており、「INSネット64」「INSネット64・ライト」「INSネット1500」などいくつかのプランが用意されています。
今回廃止になるのは「デジタル通信モード」のパソコン通信・FAXのG4規格のみで、「通話モード」の電話・G3規格は継続利用が可能です。
使用しているか分からないままISDN回線を使い続けることがないよう、自社がISDN回線を調べる方法を紹介します。
電話料金の明細書
1つは毎月NTTより送られる明細書で確認する方法です。ISDN回線を利用していれば、明細書の利用サービス欄に「INS通信料」と言う記載があります。INS通信料とは、デジタルデータ通信等による「デジタル通信モード」、G4FAXの通信料金を指します。
間違えてはいけないのが「INS通話料」です。こちらは音声通信やG3FAXによる「通話モード」の通信料金を指し、廃止対象ではありません。
接続機器
もう1つは、接続機器を確認する方法です。ISDN回線では、電話機・PCなどとの接続に下記の機器を利用します。これらの機器が設置されている、または記載があるか自社の設備を確認してみましょう。
・DSU(デジタルサービスユニット)
INSネット回線のデジタル信号処理装置で、光回線でいうモデムのような存在
・TA(ターミナルアダプター)
電話機やパソコンとDSUをつなぐ際の中継器で、Wi-Fiルーターのような存在
2024年問題への対応
ISDN廃止に向けて、各業界が着々と準備を行っています。ここからは、2024年問題への対応を業界ごとに紹介していきます。
流通業界
流通業界では、取引頻度や量が多いこともあり他業界と比べてインターネットEDIの普及が進んでいます。2007年には全体の効率化を目指し、流通業界全体の業務効率化とコスト削減を目的とした新しいEDI基準「流通BMS(Business Message Standards)」が公開され、大手を中心に採用が進んでいます。
医療業界
医療や医療機器業界では、VAN(付加価値通信網)とWeb-EDIのサービス展開をする「@MD-Net(日本医療機器ネットワーク協会)」が主流となっています。@MD-Netとは、メーカーと卸業者をネットワークを通して繋げるEDIで、受発注などをスムーズに行う仕組みを指します。
通信手段としてはJX手順、ebXML MS3.0などを指定しています。
これまではINS回線を用いたJCA手順が広く利用されていましたが、送受信時間に数十分かかるなどの問題がありました。JX手順・ebXML MS(ebXML Message Service)では、インターネット回線を使用して通信を行うため、大幅に時間効率が上がりました。
電子機器業界
電子機器業界では、プロセス全体の最適化を図るため、新しいEC標準である「ECALGA (Electronic Commerce ALliance for Global Activity)」が2003年に公開されました。「全ての壁を越えて、全てのビジネスプロセスをグローバルかつシームレスに繋ぎ、ダイナミックなビジネス展開を可能にするビジネススタンダード」をコンセプトにしています。
通信手順として、インターネットEDIのebXML MS(ebXML Message Service)が接続が可能です。
自動車業界
自動車業界では、2010年よりEDIネットワークとしてJNX(Japan Automotive Network Exchange)が稼働しています。自動車メーカーや部品メーカーはインターネットや専用線などを通じてアクセスします。
化学業界
化学業界では、標準EDIとして「Chem eStandards」が世界的に普及しています。併せてXML形式で72種の業務メッセージが規定されており、業務効率化が進められています。
ISDN終了への対策・対応は早めに
2024年問題に向けて、様々な業界が対策を検討しています。特に食品業界や飲食業界、スーパーなどの小売業界ではISDN回線でEDIを使用している場合が多いです。
ISDNが終了する日は近い将来に確実にやってきます。業務に支障が出る前に、自社で使用している回線の種類を確認し、対策を行いましょう。

WRITER
トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木康人
広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。