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2018.12.07

ISDN(INS)とは?ISDNの歴史と終了の背景を解説|トラムシステム

2024年に終了することが決定したISDN。ISDNとはADSLや光通信、Wi-Fiなどが生まれる前に活躍していたインターネット接続方法ですが、どのような仕組みで、なぜ終了が決まったのでしょうか。今回は、インターネットの歴史に残るISDNについて解説します。

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ISDNとは

ISDNとは「Integrated Services Digital Network」の頭文字をとった言葉であり、日本語では「サービス総合デジタル網」などと訳されます。

ISDNは、電話線を使用したデジタル回線のインターネット通信技術です。ISDNが普及するまでのインターネット接続方法はアナログ回線でしたが、ISDNはデジタル回線でインターネット接続を行えたため、当時のユーザーはより高速なインターネットを楽しめるようになりました。

ISDNの仕組み

アナログ回線である一般の電話回線を、デジタル回線であるISDN回線へ変更する場合は必要な装置が複数あります。ISDN回線を利用するためには、ダイヤルアップルーターもしくはTA(ターミナルアダプター)が必要です。TAにDSU(デジタル回線終端装置)が内蔵されている場合は必要ありませんが、内蔵されていなければ別途DSUが必要になります。

ただ、現在ではDSU単体商品はあまり販売されておらず、一般的にはDSUとTAが一体化された状態で市場に出ています。回線をDSUに接続し、DSUからTAへと繋ぎ、TAが電話やFAXのアナログポートやパソコンのDATAポートへと接続するという形です。

これらの装置があることによって、アナログ回線の電話やFAXと一緒に、インターネットのデジタル回線も利用できる仕組みになっています。

ISDNとINSの違い

「ISDN」と「INSネット64」「INS64」に大きな差異はなく、ほぼ同じ意味です。

「ISDN」が世界標準化された国際規格の名称であるのに対し、「INSネット64」はNTTグループの提供しているISDN通信サービスの名称になっています。

国際規格のISDNを使用した日本企業の国内インターネット接続サービスがINSネット64であり、どちらも同じISDNということです。以前は企業向けインターネット接続サービスとして「INSネット1500」がありましたが、こちらは電話回線を使用したデジタル通信ではなく光ファイバー通信でした。

ISDNとADSLの違い

ADSLとは、「Asymmetric Digital Subscriber Line(非対称デジタル加入者線)」の略で、アナログ回線を使用してインターネット通信をするサービスです。

ISDNとADSLの違いは、以下が挙げられます。

・ISDNがデジタル回線を使用しているのに対しADSLはアナログ回線の一部を使用
・ISDNと違い、ADSLは上りと下りの速度が大きく違う(非対称)
・速度自体はISDNよりもADSLの方が速いが、安定性はISDNの方が上

ISDNの歴史

ISDNが生まれた当初には、ISDNは大きな意味を持っており、メリットも大きい存在でした。また、そのメリットは高速化・大容量化した現在でも大きな存在として残っています。

サービス終了が決定したISDNには、一体どのようなメリットがあったのでしょうか?

デジタル化の幕開け

ISDNが普及する以前に電話以外の通信手段として一般的だったのは、FAXとダイヤルアップ通信でした。

FAXは画像データをアナログ回線で相手方に送る方法であり、FAXの技術を使ってインターネットを行う通信手段がダイヤルアップ通信です。しかし、FAXやダイヤルアップ通信は、それまでの一般的な電話と同じアナログ回線を利用しているため、引いている回線が一つならば、「電話で通話をしながらFAX送信」や「通話をしながらダイヤルアップでインターネット接続」といったことは不可能でした。

あらゆる通信手段にアナログ回線が使われていた時代に大きな影響を与えたのが、デジタル回線を使用するISDNです。

ISDNはデジタル回線を使用しているため、アナログ回線の電話やFAXを使用しながらインターネットを利用することも可能で、インターネット速度もダイヤルアップ通信より高速でした。

ISDNが一般向けに開拓したデジタル回線は、その後の通信インフラにとって重要な役割を果たしていきます。

音声品質の向上に貢献

それまでのアナログ回線は、銅線を繋げその銅線を信号が通ることで相手方に音声を伝える仕組みになっていました。

そのため、銅線が繋がっている間に何か些細な問題が起こった場合や、距離が長くなると信号が弱くなったり不安定になったりしてしまうことから、音声が途切れる、雑音が混じる、揺らぎが生まれてしまうといった問題が出てしまっていました。

ISDNは、「1」か「0」のみで構成されたデジタルデータをISDN回線で送る為、雑音など外部の問題がデータに影響することなくクリアな音声を相手方の伝えることが可能になったのです。

実は現代でも大活躍のISDN

2018年現在では、インターネット通信を利用する場合、ISDNやADSLの取り扱いは減少しており、多くの場合は光ファイバー網かWi-Fiなどの無線インターネット通信が中心です。

しかし、実は企業間ではISDNの安定性と信頼性から、現在でも「EDI」というネットワークの形態で利用されています。EDIとは「Electronic Data Interchange」を略した言葉で、電子データ交換サービスの事を指します。

例えば「データを取得した上で入荷計画を立て、取引先へ発注を行い、顧客に売れた商品データや在庫のデータを管理する」というビジネス上のやり取りをインターネット上で行っている企業は多いでしょう。

この流れを様々な形で管理するシステムがEDIなのです。

高度なEDIでは、複雑な多国間取引であっても自動的に数秒間で処理されます。ADSLや光ファイバー、Wi-Fiでも高速で大容量のデータ通信が可能ですが、周辺環境や機器、距離などによって大きく速度が変化してしまいました。

ISDNは、最大64kbpsもしくは2回線使用で128kbpsと速度は遅いですが規定値がそのまま出てくれる上、遠距離などの条件で速度が変化することがほぼありません。そのため、速度は出なくとも確実に安定したデータのやり取りを行いたいビジネスユーザーからの支持を受けていました。

EDIを利用した簡素なデータ管理や取引は以前から行われてきましたが、ISDNの安定したインターネット回線は「BtoB」には欠かせない存在だったのです。EC化が急務とされている日本の産業界にとって欠かせない存在がEDIであり、長い間ISDNはEDIの基礎を支えてきました。

そしてISDN終了へ

NTTグループによる固定光ファイバー回線電話網のIP網移行に伴い、ISDNサービスは2024年に終了することが決まりました。

固定電話網のIP網移行は基本的に電話局内で作業が完了するため、一般的な家庭の電話機などはそのまま継続使用可能であり何も変化はありません。

しかし、なぜデジタルインターネット回線の歴史に大きな影響を与えたISDNの終了が決定されたのでしょうか。

ISDN終了の背景

ISDNには、現代のインターネット通信には対応できない様々な問題点がありました。

1.速度が遅い
・ISDN回線・・・最大64kbps/(2回線使用)128kbps
・ADSL回線・・・下り最大12Mbps/上り最大1Mbps(12Mサービス)
・光ファイバー回線・・・最大100Mbpsまたは10Mbps

光ファイバー回線の最大速度100Mbpsとは、約100,000kbpsです。ADSL回線や光ファイバー回線は速度に大きなバラツキがあり、安定したISDN回線はほぼ額面通りの速度が出るものの、2回線を使用した場合でも128kbpsしか出ないISDN回線は桁違いの遅さであり勝負になりません。また、ISDN回線は安定性を重視した結果、拡張することができず1回線の最大速度64kbpsが限界値だったのです。

2.料金が高い
・フレッツISDN・・・6,330円/月額(フレッツISDN+INS64ライト事務用)
・フレッツADSL・・・5,290円/月額(タイプ2専用プラン(47M)+モデムレンタル料+電話ライト)
・フレッツ光ライト・・・3,250円円/月額(ファミリータイプ+ひかり電話+複数チャネル)

※参照:NTTのインターネット接続サービス料金

ISDNは月額料金が6,330円に対し、光は3,250円と半額近い金額です。各キャリアによってサービス内容や料金設定は違いますが、ISDNはADSLや光と比較しても割高な傾向です。

単純に金額だけではなく、速度の面で考えてもユーザーは負担を大きく感じてしまうでしょう。また、2回線を使用し最大値の128kbpsを出す場合は、2回線分の料金を支払う必要があります。
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まとめ

ISDN終了の原因となったNTTによる固定電話網のIP網移行は、家庭向け通信サービスにはさほど直接的な影響はありませんが、産業向けの通信サービスには大きな影響を与える場合があります。

2021年1月に他事業者とのIP接続開始、2024年1月に固定電話切り替え開始、2025年1月の固定電話切り替え完了、というスケジュールで今までの固定電話回線がIP網へと切り替えられていきます。

今後は、ISDNで利用されていたアナログモデム使用のEDIもIP変換されていきます。こうして、一時代を築いたISDNが完全終了することとなりました。


WRITER

トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木 康人

広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。


UNIVOICEが東京MXの「ええじゃないか」という番組に取り上げられました。

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