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働き方改革で何が変わるのか|賃金ルール・割増率編|トラムシステム

賃金に関する制度変更は、雇用する企業側にとっても雇用される労働者側にとっても大きな問題です。働き方改革法案には、以前から問題とされていた残業代支払いの厳格化と割増率の変化、同一労働同一賃金の制度改革が含まれています。現在の賃金体系と問題点、働き方改革法案による変更点について解説します。

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現在の賃金ルール

賃金とは、労働基準法第11条に定められた労働の対価として支払われる金銭。働き方改革実行計画では、名目GDP成長率に配慮しながら引き上げていくことを計画しています。また、社会問題化している正規雇用労働者と非正規雇用労働者の格差にも対策を行う予定です。現在の日本の賃金状況と現在の課題、今後の展望はどうなっているのでしょうか。

平均賃金と最低賃金の現状

【平均賃金】
国税庁の報告によると、2017年の日本の平均賃金は232.2万円。10年前の2007年の平均賃金が237.2万円であるため、10年間で平均賃金は下がっています。しかし、短期的な見方によれば平均賃金は上昇傾向にあることも事実。何故なら、2008年にアメリカ発のリーマンショックが発生したことから日本経済は大打撃を受け、平均賃金が2009年には405.9万円という所まで下がっていました。

10年かけ、やっとリーマンショック前の水準に戻ったという事です。一方で、バブルも終わっていた20年前の平均賃金は467.3万円。今後、現在の上昇傾向を維持できるかどうかが重要です。国際的には平均賃金は大きく上昇傾向です。東南アジアや中央アジアの新興国の賃金の急上昇がけん引していることは確かですが、ヨーロッパ諸国も上昇していることから日本が立ち遅れている現状が明確です。

【最低時給・最低賃金】
日本では、最低賃金は地域によって差があり、景気動向によっても変動します。しかし、特定の産業や、外国人実習制度など一部の業種・制度化においては、最低賃金は保証されません。働き方改革実行計画では、名目GDPに配慮をしながら年率3%程度を目途に引き上げていく予定です。また、最低時給が全国加重平均1,000円となることを目標としています。最低賃金は各国制度や習慣が違うため、国際比較は難しいでしょう。

非正規雇用のこれまで

非正規雇用とまとめられていますが、働き方は多様です。非正規雇用労働者の方々の中にも卓越した技能を持ち高給で働くプロフェッショナルの方もいますが、多くは時給・日給という給与体系の低賃金労働者が中心であることが現実。厚生労働省の報告によると、平成元年(1989年)には全労働者の中の非正規労働者の割合は19,1%、平成も終わりに差し掛かる平成29年(2017年)には37.3%と増加しています。

非正規雇用の増加理由

失業率が増加し雇用環境が悪化した場合、企業側は「いつでも使い捨て出来る非正規労働者に仕事を任せよう」とし非正規労働者割合が増加します。しかし、反対に失業率が減少し雇用環境が改善された場合でも、非正規労働のニーズは高まることもあります。失業率の低下から賃金が上がり、労働環境が良くフレキシブルな働き方を認められている社会では、労働者側が自由に働く環境を求め正規雇用よりも、縛られることが少ない非正規雇用の需要が高まるからです。

また、日本の中では高齢化も非正規雇用増加の原因の一つ。企業を定年退職した方が、今まで働いていた企業に対し受給する賃金が減少しても構わないので労働時間の短い非正規再雇用を希望するパターンがあるからです。この再雇用制度で、労働者側は安定した同じ職場で働き続けることができ、企業側はキャリアを積んだ労働者を低い賃金で雇用し続けることが可能ということでメリットがあるとされています。

働き方改革法案施行後

働き方改革の大きな柱の一つが「同一労働同一賃金」です。これまでは、正規雇用の正社員と非正規雇用の派遣社員が同じ職場で同じ業務を行っていても賃金の格差が生まれていました。この不平等な労働環境を是正するための政策の一つが同一労働同一賃金。

同じ規則を作ることができるか

そもそもの基本給が雇用形態によって違う事が一般的です。正社員と非正規社員だけではなく、非正規労働者の中でもアルバイトと派遣社員では給与水準が違うこともあります。また、基本給だけではなく、手当てに関しても同じ条件で出る労働者と出ない労働者が存在しており、中小企業では特に深刻です。まずは基準の作成が求められます。

一般所得労働者と高所得労働者は分けて考える

高度プロフェッショナル制度が新たに創設され、年収1,075万円(予定)の収入がある労働者の方は、それ以下の年収の労働者とは違う雇用規制が適応されます。一般的な年収の労働者と同じ休日制度などを適応させると、「稼げる時に規定の労働時間が超えてしまい働くことができない」といった問題が起きることを防ぐためです。「稼げる人は好きなだけ働いて稼いでくれ」という目的の制度です。

現在の時間外労働の割増率

「時間外労働」とは、労働基準法で定められている法定労働時間(働く時間の上限設定)は原則的に1日8時間まで、週に40時間であり、特例として44時間まで認められることもあります。企業の就業規則や労使間の36協定などによって一日の労働時間が8時間以下になる場合もありますが、一日の労働時間が法定労働時間の8時間を越えた際は、企業側が「割増賃金」を支払う義務が生じます。一般的にこの超過労働分の割増賃金を残業代といいます。

残業代の割増率は企業や合計時間によって変わる

時間外労働の割増率は、一時間当たりの25%もしくは50%です。

【一か月の労働時間が60時間以下の場合】
・時間外労働の合計時間数×一時間当たりの賃金×1,25

【一か月の労働時間が60時間以上の大企業の場合】
・時間外労働の合計時間数×一時間当たりの賃金×1,5

中小企業労働者の場合は、一か月の労働時間が60時間以上でも当面の間は割増率が25%として設定されていました。

15分、30分の端数はどうするべきか

「15分前出勤」「就業時間後の30分間のちょっとした作業は残業にカウントしない」という企業も珍しくはありません。労働基準法では1か月の合計時間数が割増賃金の対象となり、合計時間数が160時間30分だった場合は、30分の端数を切り捨て160時間として処理されます。しかし、「1か月の合計時間数」の30分が切り捨てになるのであって、「1日の合計時間数」が切り捨てとなるわけではありません。1か月で20日出勤し、毎日30分の残業を行えば、1か月で10時間の時間外労働となります。15分、30分程度の時間でも労働は労働であるため、時間外労働の対象となります。

増加する未払い賃金訴訟

使用者側が「この程度の残業ならば労働時間としてカウントしなくてもいいだろう」と判断していたとしても、労働者側にとっては重大な問題であり、時間外労働は時間外労働です。平成28年度に厚生労働省が賃金不払残業の是正として監督指導した企業数は1349企業。総額127億2,327万円の支払い指導が行われました。

未払い賃金に不満を持った労働者が労働基準監督署へ通報し、悪質性が高いと判断された場合は、逮捕や送検の可能性もあります。また、不払いだった賃金に対し、遅延損害金や付加金が上乗せされる場合もあります。賃金の不払いは労働者側の問題だけではなく、使用者側にとっても大きなリスクです。

働き方改革法案施行後

サービス残業などが問題視され社会問題化したため、時間外労働の割増賃金支払いは厳格化される傾向です。長時間労働是正が長年の課題でしたが、残業削減効果も期待されています。

60時間を越えれば大企業も中小企業も変わらない割増率に

これまでは、大企業は合計時間外労働時間が60時間を越えれば割増率は25%から50%へと引き上げられましたが、中小企業の場合は合計時間外労働時間が60時間を越えても25%を維持していて問題はありませんでした。本来は割増率増加義務があったのですが、猶予という形で逃れられていた状態です。しかし、働き方改革法案施行後には、合計時間外労働時間が60時間を越えれば中小企業でも割増率を50%へと引き上げる必要があります。

労働時間把握の厳格化が賃金に影響

労働時間をカウントせず割増賃金を払わないサービス残業が問題視されていましたが、企業側の労働時間把握義務が厳格化されました。労働時間把握義務は、労働者のメンタルヘルスケア目的の意味も大きいですが、サービス残業防止や長時間労働是正にも効果があるとされています。

労働時間はタイムカードやパソコンなどの履歴から客観的な記録として残すことが義務化され、記録は3年間は残しておかなければいけません。自発的な学習として研修や講習などを労働者が受けた場合も、使用者の指揮下にあると判断できる場合は、労働時間とみなされ賃金の支払い義務が発生します。

同一労働ならば賃金以外も同一にしなければならない

同一労働同一賃金制度では、基本給を同一にする必要がありますが、そのほかの待遇も同一にしなければいけません。賞与や手当といった金銭に関する項目だけではなく、福利厚生や昇進、教育機会も正規雇用と非正規雇用で差を付けることは禁止されています。働き方改革法案の成立以前からパートタイム労働法などによって差別的な待遇は禁止されていましたが、野放しになっていた状態が続くことで社会問題化し、今後は対応が強化します。

平等な待遇を求める行政ADR(裁判外紛争解決手段)を利用し、不均衡で差別的な待遇があったと判断されると行政からの指導が入ります。行政ADRは無料での利用が可能です。

まとめ

働き方改革法案では、賃金制度や時間外労働、健康管理など様々な変更点がありますが、一度にすべてが変更されるわけではありません。一つの制度内でも変更される時期や業種、事業形態などに違いがあり、同一労働同一賃金に関する大きな変更があるのは、大企業ならば2020年4月1日から適用が始まりますが、労働者派遣法に関係している部分を除外し中小企業には2021年4月1日から適用予定です。

また、2018年11月段階でも予定部分が多く、今後も制度が変化することはあり得ます。行政は様々なセミナーを各地で開催しており、周知に努めています。各事業者は、様々な情報を得ながら準備していくことが重要です。


WRITER

トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木 康人

広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。


UNIVOICEが東京MXの「ええじゃないか」という番組に取り上げられました。

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