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働き方改革で何が変わるのか|有給休暇・残業編|トラムシステム

有給休暇は取れない、残業は無駄に長い。国際的にも知られている日本人の過酷な労働スタイルですが、働き方改革法案では長時間労働の是正が大きなテーマとなっています。現在の日本の労働環境とはどのようなもので、働き方改革ではどのように変化をするのでしょうか?雇用する企業側も労働者側も知っておきたい有給休暇制度と時間外労働制度について解説します。

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現在の有給休暇制度

有給休暇の取得は、労働者の権利です。労働基準法第三十九条に明記されており、雇用者は一定の条件のもとに労働者に対して有給の休暇を与える義務を持っています。

年次有給休暇のシステム

・「入社してから6か月以上経っている」
・「全労働日(労働契約上の労働日)の出勤率が8割以上」
 以上の条件が揃えば、労働者は有給休暇を取得する権利を得られます。

有給休暇の所得可能日数は勤続年数によって変動し、勤続年数が長ければ得られる有給休暇日数も長くなります。

勤続年数が6か月・・・有給休暇は10日
勤続年数が1年6か月・・・有給休暇は11日
勤続年数が3年6か月・・・有給休暇は13日
勤続年数が6年6か月以上・・・有給休暇は20日

有給休暇制度は罰則付きの制度であるため、有給休暇を労働者へ与えていない企業は労働基準法違反として罰せられます。「懲役6ヶ月又は30万円以下の罰金」が課されることもあるため、雇用者は注意が必要です。

有給休暇取得の現状

「日本は有給休暇の取得率が低い」ということはよく指摘されていますが、実態はどうなっているのでしょうか?

【日本の有給休暇取得率】

旅行サイトである「エクスペディア・ジャパン」の発表によると、日本は有給休暇の取得率は50%。2017年の調査で、世界30か国を対象にしており日本は最下位。フランス、スペイン、ブラジルといった国は有給取得率100%という回答でした。しかし、日本人の休みの日がそれほど少ないのかというと、実はそうではありません。日本の一年間の祝祭日の日数は合計17日。これは世界的に見ても一・二位を争う多さであり、有給取得率100%のフランス、スペインは一年間の祝祭日の日数は合計9日という少なさです。日本の特徴は、「長い休暇をとらない」という点と「有給休暇を取得しにくい職場環境」という点があります。

周知されていない有給休暇制度の問題点

職場のコミュニケーションの問題で有給休暇の申請を行い難い、という問題とは別に、そもそも有給休暇の基礎的な知識が周知されていないという点もあります。

【パート・アルバイトでも取得可能】
「有給休暇は正規雇用の正社員のための物」という考え方を持っている方もいるかも知れませんが、有給休暇は全労働者の権利です。パートタイム労働者やアルバイト、派遣社員といった非正規雇用労働者の方にも、当然有給休暇取得の権利があります。しかし、フルタイムの労働者と週所定労働時間が30時間未満の労働者では得られる有給休暇の日数は違っており、30時間未満の労働者の方が少なくなります。

【取得理由は問わない】
「有給休暇を取得するための言い訳」を悩む方もいますが、有給休暇取得のために上司を納得させる必要はありません。バカンスであれ飲み会であれ、どんな理由でも取得することは可能です。「遊ぶ為に有給休暇を申請するとはけしからん」と、有給休暇の申請を制限、拒否することは原則的に違法行為に当たります。本来、労働者が当然持っている権利であるため、理由自体必要ありません。また、労基法附則136により、有給休暇を取得した労働者に対して賃金の減額など不利益になるような対応をしてはいけません。

しかし、事業に大きな影響が出てしまう場合は、雇用側は時季変更権を行使し、有給休暇を延期させることも可能です。ただ、「繁忙期だから」「人手不足だから」といった理由では、一般的に時季変更権を行使することはできません。忙しいことが分かっているのならば人材を補充しておくべきであり、それを怠っていることは雇用者側の怠慢だと判断されるからです。有給休暇の取得を一定期間前に申請させておくという事を就業規則において決めることはでき、当日になって申請された有給休暇を拒否することは可能です。

【有効期限がある】
一定期間を過ぎれば得られる有給休暇ですが、時間が経ちすぎれば消滅してしまいます。有給休暇にも時効というものがあります。一般的には、有給休暇は2年で時効を迎えるという企業が多いですが、平成29年の民法改正により債権の時効が5年に統一されたため、有給休暇の時効も5年まで伸ばせる可能性も。また、多くは時効により古いものから消滅していく有給休暇ですが、取り決めによっては本年度の有給休暇から消滅していく、という規則も可能なため、有給休暇に関しては各企業の就業規則の内容によって変化があります。

働き方改革法案施行後

働き方改革法案によって、労働基準法第三十九条に追加される形で有給休暇の取得内容に変化がありました。どのような改正が行われたのでしょうか。

有給休暇取得を強制

働き方改革法案施行前までは有給休暇は申請しなければ一日も休まない状態でしたが、2019年4月1日から始まる働き方改革法案の施行によって一部の有給休暇が義務付けられることになりました。有給休暇の権利を10日以上得ているすべての労働者に対し、年間5日の有給休暇が義務付けられます。労働者がすべての有給休暇を自発的に消化した場合は、企業側の対応は今までと何も変わりませんが、労働者の有給休暇取得日数が年間5日に満たない場合は労働者に休暇を取らせないと企業側が労働基準法違反となります。

【有給休暇取得強制の理由】
今まで政府はワークライフバランスや健康面の問題などから有給休暇取得率を増加させるための法改正や周知といった方法をとってきましたが、日本の労働文化から有給休暇取得率は上がりませんでした。厚生労働省の調査によると、有給休暇取得をためらう理由の第一位は「みんなに迷惑がかかると感じるから」。有給休暇を取得しない個人の問題ではなく、企業や社会全体の風土的問題であるとし、一部有給休暇の取得を強制する結果になりました。

現在の残業基準

原則的に1日8時間、週40時間を超えた労働を「法定時間外労働」といい、時間外労働の賃金は割増賃金として支払う必要があります。時間外労働のことを一般的に「残業」といい、残業分の労働時間は一般的な賃金の25%分、合計残業時間が60時間を越えている大手企業は50%分を上乗せして支払わなければなりません。

日本企業の残業時間

厚生労働省の報告(「毎月勤労統計調査 平成28年度分結果確報」)によると、日本の一般労働者の平均残業時間は月に14時間強とされています。もっとも残業時間が長い業種は運輸業・郵便業部門で26〜7時間。もっとも残業時間が短い業種は医療・福祉部門で6〜9時間。しかし、この統計は真実に近いものなのでしょうか。実は、この統計は企業側の申告で作られています。そのため残業代無しで働く「サービス残業」などは入っておらず、実態とはかけ離れた数字であるとの指摘も多くされています。

日本社会の残業の問題点

【上司が残業をしているから帰れない】
上司や先輩など、上の立場の人間の言葉を重視する日本では上司が残業している職場で部下が先に帰宅するということは行い難いという方もまだいらっしゃいます。

【青天井の36協定】
労使間協定の一つに「36(サブロク)協定」というものがあります。正式名称は「時間外・休日労働に関する協定届」であり、急に納期が変更となり時間外労働や休日労働を普段より増やさないと対応ができない、といった緊急時に使用するような臨時的な決まり事であり、そのための特別条約も付いています。36協定は一日・一か月・一年と期限が限定されており、労働基準監督署への届け出も必要。本来は限定的な36協定ですが、特別条項を悪用した違法残業や、36協定そのものを無視した違法残業が多発したため社会問題化しました。

働き方改革法案施行後

意識の問題が多い日本企業の労働問題。長年の習慣が生み出した問題に対し、どのような対策が取られたのでしょうか。

上限を超えると罰則

長時間労働の是正を目的として、働き方改革法案では従業員の健康を考えず残業を課す企業に対して罰則を付けることになりました。元々、月45時間・年間360時間という残業時間の上限はありましたが、罰則が無かったため雇用者による違法労働を野放しにしている状態に。働き方改革法の中で罰則を付けることにより、残業削減と違法労働の抑止を期待しています。繁忙期などに時間外労働の拡大が可能な36協定の場合も、働き方改革法案の中で年間720時間、一か月100時間未満という上限を設けました。特別条項が付いており臨時的なものであっても、上限を超えると労働基準法違反の違法行為として罰せられます。

中小企業も対象

時間外労働の残業には、普段の賃金に対し25%分を上乗せする必要があります。しかし、一か月に60時間を超える時間外労働の場合は、上乗せ分は賃金の50%分へと変動します。この50%分への変動はそれまで大企業のみが対象であり、中小企業は一か月に60時間を超える時間外労働の場合でも25%分で問題はありませんでした。働き方改革により、2023年4月1日からは中小企業も一か月に60時間を超える時間外労働の場合は、賃金に50%分を上乗せした残業代を支払う必要があります。

まとめ

上司の目が気になって有給休暇を申請することも残業をせずに早く帰ることもできない、というビジネス上の習慣が日本社会では一般的となっていました。高度成長期やバブル期にはよく見られた「休暇も取らず、勤勉に長時間働く」といった日本の美徳は、不景気に陥るとブラック企業や過労死の続出など負の面を日本社会にもたらせました。失業率が改善した2012年以降には労働者の意識も変化を見せ、求人に応募する際もいかに休暇を取得でき長時間残業のないホワイトな職場かどうかをチェックするようになります。

また、企業側も肉体的に精神的に追い詰めるまで労働者を働かせることがそのまま生産性向上に直結するかどうか疑問となっている上、過労死認定などの裁判も雇用者側へ厳しい判決が出やすい傾向となっているため、無理な労働を強いることのメリットが少なくなってきました。更に、今回の働き方改革法案により、違法労働には罰則が付いているため厳格に罰せられることになります。今後は、労働者の働いている時間と取得している有給休暇の日数の正確な把握と記録が、雇用者にとってはより一層重要となります。


WRITER

トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木 康人

広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。


UNIVOICEが東京MXの「ええじゃないか」という番組に取り上げられました。

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