コールセンターとカスタマージャーニーの関係とは?役割・メリットを解説|トラムシステム
カスタマージャーニーとは、顧客がサービスを認知して購入するまでのプロセスを具現化したフレームワークです。近年はコールセンター・コンタクトセンターの現場でも用いられており、顧客満足度やCX(カスタマー・エクスペリエンス)向上に役立てられています。
コールセンターにおけるカスタマージャーニーの役割、メリット、作り方について解説しますので、コールセンター業務に携わる方はぜひ参考にしてください。
目次
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、顧客がサービスを認知して購入するまでのプロセスを一種の旅と捉え、可視化するフレームワークです。顧客の心理や行動の変化を時系列順に落とし込んだカスタマージャーニーマップを作成し、顧客理解やマーケティング施策検討に用います。
カスタマージャーニーで重要な要素は、ペルソナ設定と顧客接点(タッチポイント)です。
ペルソナとは自社のマーケティング対象となる架空の人物像で、これまでの顧客データやリサーチをもとに作成されます。顧客接点とは顧客がサービスを認知するきっかけとなる媒体を指し、主な顧客接点には以下があります。
・Webサイト
・ECサイト
・アプリ
・雑誌
・メールマガジン
・テレビ
・動画サイト
カスタマージャーニーマップの目的とメリット
インターネットの普及や顧客視点のマーケティングなど、カスタマージャーニーマップを作成する目的は複数存在します。
顧客目線のマーケティング実現
消費者ニーズの多様化や社会のデジタル化により競争は激しさを増しており、これまでのような企業目線、製品目線でのマーケティングには限界があります。かわって台頭しているのが、顧客のニーズを起点にして施策やサービスを発案する顧客目線のマーケティングです。
カスタマージャーニーマップはペルソナを利用し、認知~購入に至るプロセスを旅としてとらえ、顧客目線のプランを設計します。顧客の感情、思考、行動を詳細に探ることで、より顧客心理に寄り添ったサービスやマーケティング施策を立てることに役立ちます。
顧客接点ごとの満足度向上
インターネットの普及により顧客接点は増加しており、新型コロナウィルスによる購買行動の変化もあいまって複雑化の一途を辿っています。顧客接点ごとの集客や差別化が重要であるものの、従来のような経験やノウハウに頼った施策では効果が望ません。
そこで、顧客接点とペルソナをマッピングし、顧客満足度向上につながる施策を考案するカスタマージャーニーマップが多くの企業で作成されています。顧客接点ごとの心情や行動を具体化し、重要な顧客接点を抽出して、満足度向上に繋がるステップを考案することが可能です。
社内の共通認識強化
カスタマージャーニーマップは、社内の共通認識強化にも役立ちます。マーケティング部門だけでなく営業、開発、デザイン部門など、あらゆる部署の人間が参画し横断的に作成するからです。
企業内で集客や満足度向上に関する課題が共有されるため、意思決定のスピードが迅速になり、PDCAサイクルの効果的な実行につながります。顧客心理に関するイメージを共有することで、より精度の高い施策実行や顧客ニーズを満たした商品開発が可能です。
カスタマージャーニーとカスタマー・エクスペリエンスの違い
カスタマージャーニーと混同されて使われがちなのが、カスタマー・エクスペリエンス(CX)です。カスタマー・エクスペリエンスは「顧客体験」を意味しており、購買プロセスを取り巻く体験を切り取り、満足度向上や収益改善に必要な施策を考えるために活用されています。
ただし、カスタマー・エクスペリエンスのみでは、購買プロセスに至るまでの顧客心理変化や、顧客接点ごとの状況を把握できません。まずはカスタマージャーニーマップを作成して顧客心理や顧客接点を具体化した上で、カスタマー・エクスペリエンスを設計しましょう。
カスタマージャーニーにおけるコールセンターの重要性
カスタマージャーニーは、顧客接点の中心となるコールセンターでも重要性を増しています。どのような役割を果たしているのか見ていきましょう。
顧客の生の声の収集
顧客の生の声が集まるコールセンターは、ペルソナ設計や顧客接点抽出において重要な役割を果たします。コールセンターで集まった声を参考にすることで、精度の高いカスタマージャーニーマップが作成可能です。
ここでポイントとなるのが「顧客がコールセンターに問い合わせてきた理由」を意味するコールリーズンです。例えば、以下のような理由が考えられます。
・Webサイトでのサービス説明が不十分
・店舗での接客に不満
・問い合わせ窓口の不足
これらは顧客接点での顧客体験に何らかの不備があることを示しており、購買プロセスの最適化に繋がる重要な情報です。このような情報をマップに反映すれば、カスタマージャーニーの精度をより向上させられます。
一貫した顧客サービスの提供
企業の顔として顧客と直接接点を持つコールセンターは、カスタマージャーニーを途切れさせない一貫した顧客サービス提供に役立ちます。例えば「部署ごとにサービスの説明が異なる」とクレームがあった場合、直ちに修正して顧客サービスを最適化可能です。
インターネットの誕生により顧客接点は増加しつつあるものの、メール、電話、チャットなどの媒体ごとの矛盾や食い違いが、一貫した顧客サービスの阻害に繋がる現象が報告されています。オペレーターがそれをいち早くキャッチし、改善につなげられるコールセンターはカスタマージャーニーの要です。
コールセンターがカスタマージャーニーに取り組むメリット
コールセンターがカスタマージャーニーに取り組むことで、企業は複数のメリットを獲得できます。コールセンターを運営している企業は積極的にカスタマージャーニーに取り組み、購買プロセス全体の最適化を目指しましょう。
エフォートレス体験を実現できる
カスタマージャーニーを通じたコールセンター業務の最適化により、顧客にエフォートレスな体験を提供可能です。エフォートレスには「努力をなくす」意味があり、以下のような状況を指します。
・サービスのメリットが明確
・購買に至る手順が明瞭
・機器や画面の操作が簡単
カスタマージャーニーを通じて顧客が普段感じてる負担や手間暇を把握し、コールセンターでそれらを取り除いていけば、差別化やコアコンピタンス(企業の特定の分野における優位性)獲得に繋がります。具体的な施策例は以下の通りです。
・チャットボット導入による問い合わせ業務の24時間365日化
・FAQ導入による顧客の課題解決力強化
・コールセンターでCES(カスタマーエフォートスコア)を集計し現状把握
エフォートレス体験を通じて顧客に自社への思い入れを深めてもらい、リピーターを獲得しましょう。
カスタマー・エクスペリエンスを向上できる
カスタマージャーニーを通じて、単なる問い合わせ窓口と位置づけられてきたコールセンターを「カスタマー・エクスペリエンスを高める拠点」として再定義できます。コールセンターを起点とし、あらゆる顧客接点の品質を均質化することができるでしょう。
コールセンターでカスタマー・エクスペリエンスを向上させる方法は複数存在します。
・応対品質の向上
・他の顧客接点との連携強化
・顧客サービスの一環化
カスタマージャーニーマップを通じて必要な施策を考案し、1つずつ実行していきましょう。
コールセンターの業務を効率化できる
カスタマージャーニーを意識することで、顧客がコールセンターに問い合わせをするに至った経緯であるコールリーズンを分析可能です。コールリーズンはカスタマージャーニーだけでなく、そもそも問い合わせに至らないようにサービスを充実することにも繋げられます。
コールリーズンが発生しないよう事前に対策を講じれば、問い合わせ件数の減少や顧客満足度向上だけでなく、人件費の削減も可能です。カスタマージャーニーと並行して、コールセンターの業務改革にも取り組みましょう。
まとめ
コールセンターはカスタマージャーニーを実現する重要拠点として大きな役割を果たします。コールセンターを通じて顧客の声を収集し、カスタマージャーニーマップを作成して、競争力強化やコールセンター業務最適化を実現しましょう。

WRITER
トラムシステム(株)メディア編集担当 鈴木康人
広告代理店にて、雑誌の編集、広告の営業、TV番組の制作、イベントの企画/運営と多岐に携わり、2017年よりトラムシステムに加わる。現在は、通信/音声は一からとなるが、だからこそ「よくわからない」の気持ちを理解して記事執筆を行う。